時評(12月3日)

親と子が長い間会えないのは好ましくない。離婚や別居で夫婦関係が冷え込んでも子は巻き添えにせず、親側が子の利益を重視して新たな協力関係をつくっていきたい。 離婚や別居をしている父母の一方が子と会ったり電話や手紙で交流したりする面会交流は子育て.....
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 親と子が長い間会えないのは好ましくない。離婚や別居で夫婦関係が冷え込んでも子は巻き添えにせず、親側が子の利益を重視して新たな協力関係をつくっていきたい。[br][br] 離婚や別居をしている父母の一方が子と会ったり電話や手紙で交流したりする面会交流は子育てに関わる親の権利であり、義務である。しかし同時に親の養育を受ける子の権利でもあることが重要だ。子にとって最良な交流環境が大切になる。[br][br] 民法によると面会交流は夫婦が協議離婚の際、養育費などとともに「子の利益」を最優先して定めなければならない。家裁の実務でも、連れ去りや虐待、暴力など「特段の事由」がない限り認めるのが原則だ。自治体や支援団体の協力も得て、子と同居している親の不安を取り除き、両親の協力関係を築きたい。[br][br] 協議が調わない場合は家裁に調停や審判の申し立てができる。決着しなければ訴訟も可能だ。最近は少子化や離婚の増加などを背景に申立件数が急増。複雑で解決困難な事案が増えた。[br][br] 両親とも親権を持つ共同親権の米国から帰国した別居夫婦がその一例だ。日本の単独親権ではどちらかが親権者に指定され、面会交流調停は親権争いのようだという。単独親権は法の下の平等を定めた憲法に違反するとして、離婚した親や子らが国家賠償を求める訴訟も起きている。親権を失い子育てに関われないなどの訴えは悲痛だ。[br][br] 昨年、法務省などによる家族法研究会ができ、親権や面会交流などの検討が続いている。海外では共同親権の国が多く、単独親権はトルコ、インドなど少ない。双方の利点と欠点が克服できる新立法が望ましい。[br][br] 面会交流の焦点は子の利益への配慮のほか、両親の協力、長期間の実施、子の成長に伴う実施方法の変更の四つある。子は離別のダメージが癒やされ、親の愛情への安心感も生まれる。ただし民法は「子の利益」と抽象的に記すだけであり、円滑な実施には法令で利益の内容を具体化するのが望ましい。[br][br] 両親の協力が得られるよう一部の家裁では面会交流の留意事項をまとめたDVD「親ガイダンス」を上映。これを全国へ広げたい。約束通り実行しないときはお金を払わせる間接強制の申し立ても増えた。が、まずは実施できる環境づくりが重要だ。[br][br] 面会交流の約束はスタートにすぎない。成長に合わせて実施条件を見直す必要がある。それには親のためより子のために両親間で信頼関係を築き直すことが基盤になる。