時評(3月4日)

中国に端を発した新型コロナウイルスの感染拡大で、日本経済に突然、急ブレーキがかかった。感染は世界各国に波及、コロナ・ショックともいうべき世界的株安の連鎖を招いた。2008年のリーマン・ショック以来の金融資本市場の動揺だ。世界経済の下方リスク.....
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 中国に端を発した新型コロナウイルスの感染拡大で、日本経済に突然、急ブレーキがかかった。感染は世界各国に波及、コロナ・ショックともいうべき世界的株安の連鎖を招いた。2008年のリーマン・ショック以来の金融資本市場の動揺だ。世界経済の下方リスクに対処するため国際的連携が不可欠だ。[br] 政府は、新型肺炎の影響を受けた企業などを支援するため19年度予算の予備費を活用して緊急経済対策の第2弾を打ち出す方針を決めた。日銀の黒田東彦総裁は2日、「潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努めていく」との談話を発表した。危機を先取りする機敏で弾力的な対策は急務だ。[br] 新型肺炎が拡大する前の日本経済は、昨年10月の消費税率引き上げで陰りが見え始めていた。昨年10~12月期の実質国内総生産(GDP)は、年率換算で前期比6・3%減と大きな落ち込み。内閣府が各種景気指標を基に機械的に算出する景気動向指数の基調判断は、昨年8月分から5カ月連続で「悪化」だ。[br] ただ、政府は2月の月例経済報告で、雇用状況が良いことなどを理由に「景気は緩やかに回復」との従来の判断を変えなかった。消費税増税による買い控えはいずれ収束、東京五輪に向け景気は上向きに転じるとのシナリオを描いていたからだ。[br] しかし、イベントの相次ぐ中止、自粛ムードの広がりで日本各地の繁華街や観光地は閑散としている。中国政府が、中国人の団体旅行を1月下旬から禁止する方針を打ち出したことで、中国人旅行客のキャンセルも多く出た。大手百貨店の2月の売上高は、前年同月に比べ率で2桁減となる社が相次いだ。[br] 企業の生産面では、中国からの部品調達が滞り、日産自動車やキヤノンのように、工場操業の一時停止も出ている。日本経済のけん引役だった個人消費や企業の設備投資が腰折れすると、今年1~3月期のGDPは2期連続でマイナスになる可能性が強い。感染の抑え込みで最も重要なのは国際協調による情報共有、対策の連携だ。経済のグローバル化が進んでいるだけに、国際物流の混乱などは一国だけでは対処できない。[br] 2月下旬にサウジアラビアで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、新型肺炎に関して「全ての利用可能な政策手段を用いる」ことで一致した。問題はその実効性だ。感染症対策は国境を越えて取り組むべき緊急課題。自国第一主義が広がる中、大局的見地からの危機対応が求められる。