【ワクチン特許一時放棄】各国の足並みに乱れ 日本は明確な態度示さず

 新型コロナワクチン特許の一時放棄を巡る各国の反応
 新型コロナワクチン特許の一時放棄を巡る各国の反応
新型コロナウイルスのワクチン特許の一時放棄を巡り、各国の足並みが乱れている。途上国への供給拡大につながるとして米国が容認を表明し、フランスも支持。一方、製薬が強いドイツは反対姿勢だ。日本は明確な態度を示していない。調整の舞台となる世界貿易機.....
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 新型コロナウイルスのワクチン特許の一時放棄を巡り、各国の足並みが乱れている。途上国への供給拡大につながるとして米国が容認を表明し、フランスも支持。一方、製薬が強いドイツは反対姿勢だ。日本は明確な態度を示していない。調整の舞台となる世界貿易機関(WTO)での議論は「ワクチン外交」の思惑も絡んで難航が必至だ。[br][br] ▽異例の手段[br] 「コロナのパンデミック(世界的大流行)という状況では異例の手段が必要だ」。米通商代表部(USTR)のタイ代表は5日の声明で特許の一時放棄の意義を強調した。放棄は昨年10月にインドと南アフリカがWTOに提案。米国は英国やスイスなどと並んで反対していたが、態度を一転した形だ。[br][br] バイデン大統領にとって感染者急増に苦しむ途上国に手を差し伸べることは、トランプ前政権との違いを際立たせて「国際協調回帰に向けた格好のアピール材料」(通商筋)になる。タイ氏はワクチンを開発した米製薬大手ファイザーのトップらと4月に会談。米紙によると、バイデン氏が出席した5月4日のホワイトハウスでの会議で最終決定したという。[br][br] 世界保健機関(WHO)アフリカ地域事務局のモエティ事務局長は安価なワクチン生産実現へ「転換点になり得る」と歓迎し、インド商工省も「WTOで迅速に承認されると期待している」と表明。フランスのマクロン大統領は「全く賛成だ」と語った。[br][br] ▽暗に批判[br] 敏感に反応したのがドイツだ。ワクチンをファイザーと共同開発したバイオ企業ビオンテックを抱える。ワクチン供給問題の根底にあるのは生産能力と品質基準で「特許権ではない」とする。[br][br] ワクチンの世界的輸出地域である欧州連合(EU)は7~8日の非公式首脳会議で特許権放棄を巡り協議。EUの首脳らはワクチンを「世界の公共財」と呼んできた手前、反対はしにくいが、米国が自国ワクチンを囲い込みながら特許の放棄を訴えているとみて、違和感を覚えている。[br][br] フォンデアライエン欧州委員長は6日の講演で「まずは輸出を認め、供給網を混乱させる方策を取らないよう全ワクチン生産国に求める」と述べ、米国を暗に批判した。[br][br] ▽具体策見極め[br] 日本政府は賛否の表明に慎重だ。政府関係者は一時放棄の対象となる技術などについて不明な部分があるとし「米国が具体的に何をしようとしているのか見極めたい」と話す。国内製薬会社への影響や、粗悪なワクチンの製造リスクも考える必要があるという。日本製薬工業協会は7日、反対の声明を出した。[br][br] 途上国へのワクチン供給を広げている中国はWTOでの議論の推移を見守るとの姿勢で、今のところ静観している。 新型コロナワクチン特許の一時放棄を巡る各国の反応