時評(4月24日)

ロシアがウクライナ国境に大規模な部隊を集結させ、新たな軍事侵攻に踏み切るのではないかと一気に緊張が高まった。 その規模はウクライナ国防省によると15万人超に達した。2014年、同国からクリミア半島をロシア領に強制編入したとき以来、最大の部隊.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 ロシアがウクライナ国境に大規模な部隊を集結させ、新たな軍事侵攻に踏み切るのではないかと一気に緊張が高まった。[br][br] その規模はウクライナ国防省によると15万人超に達した。2014年、同国からクリミア半島をロシア領に強制編入したとき以来、最大の部隊増強で、日米欧の先進7カ国(G7)外相は共同声明でロシアの「脅迫的」な活動を非難、挑発行為をやめるよう求めた。[br][br] ロシアはここにきて、ショイグ国防相がウクライナ国境付近とクリミアで行っていた「軍事演習の課題を達成した」と表明、部隊撤収を開始した。これで3月半ば以降の緊張は当面、緩和される見通しとなった。[br][br] 撤収に先立ち、プーチン大統領が内政・外交方針を示す年次報告演説を行った。プーチン氏が外交分野で訴えた最大のポイントは勢力圏の死守だ。ロシアの国益に関わる「一線」を越えないように西側に警告、どこが一線かは「ロシア自身が決める」と力説した。[br][br] 念頭にあるのは北大西洋条約機構(NATO)が欧州で展開中の軍事演習であり、ウクライナのNATO接近だろう。そうした西側傾斜への一定の威嚇効果、西側へのけん制効果があったとクレムリンは判断したもようだ。[br][br] 最新鋭の武器配備にも触れたプーチン演説は「橋を燃やすつもりはない」と述べ、西側との対話姿勢も確認した。[br][br] 米ロ間に唯一残った核軍縮条約である新戦略兵器削減条約(新START)について、2月に5年間延長で合意したのを受けて、後継条約交渉も含め米ロ対話を軌道に乗せ、核大国としての地位を誇示したい思惑をにじませた。バイデン米大統領から夏に欧州で首脳会談を開催する提案を引き出したのは、大きな成果に違いない。[br][br] 威嚇外交には「外敵包囲網」に国民の目を向けさせ、政権の求心力を取り戻し、支持率低下を挽回する狙いもある。すべては9月の下院選挙向け対策だ。[br][br] しかし、そうした伝統的な統治手法の限界は明らかだ。収監先の刑務所で体調が悪化した反体制派指導者ナワリヌイ氏の釈放を求める最近の抗議デモには各地で市民が参加、根強い政権不満をうかがわせた。政権側は社会に対してこそ、対話の「橋」を築かなければならない。[br][br] ことし年末はソ連崩壊から30年。武力と威嚇に頼るクレムリンの自縄自縛が危惧される。軍事優先と社会抑圧がソ連崩壊の引き金になったことを忘れてはならない。