【米軍普天間飛行場】住民の危険除かれぬまま 「遺骨土砂」と不信増幅も

住宅密集地のすぐ上空を軍用機が飛び交い、住民の安全を脅かし続ける米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)。名護市辺野古移設を進める政府と県の対立構図は変わらず、基地の危険性が取り除かれないまま返還合意から四半世紀の時が流れた。国の計画では太平洋戦.....
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 住宅密集地のすぐ上空を軍用機が飛び交い、住民の安全を脅かし続ける米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)。名護市辺野古移設を進める政府と県の対立構図は変わらず、基地の危険性が取り除かれないまま返還合意から四半世紀の時が流れた。国の計画では太平洋戦争末期の沖縄戦犠牲者の「遺骨がまざる土砂」が辺野古埋め立てに使われる懸念も浮上し、県民の不信感は増しつつある。[br][br] ▽押し付け[br] 普天間飛行場のフェンスが迫る運動場で走り回る子どもたち。普天間第二小の知念克治校長(59)は「米軍機は近くを飛ばないでほしいし、飛行場は早く閉鎖してほしい」と表情を曇らせた。[br][br] 2017年12月、運動場に大型輸送ヘリコプターの窓が落下した。知念校長によると事故後、怖くて運動場に行けなくなる児童もいた。米軍機の飛行のため、45分間の屋外での授業中に7回避難したこともある。[br][br] 沖縄県には今も在日米軍専用施設の約7割が集中する。「基地が押し付けられていることを全国に知ってもらいたい」と知念校長。沖縄県の玉城デニー知事は9日の記者会見で「普天間の危険性除去を含む基地の整理縮小は、県民の長年の悲願だ」と訴えた。[br][br] ▽既成事実[br] 移設先として辺野古沿岸部の埋め立てを進める政府。加藤勝信官房長官は12日「問題の原点は、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の危険性除去と返還だ」と言及。固定化は許されないとの認識を強調した上で「辺野古移設が唯一の解決策だ」とも明言した。[br][br] 16日には米ワシントンで日米首脳会談が予定され、防衛相経験者は「双方のトップが交代して初の対面会談で、推進の立場を改めて確認すべきだ」と主張する。[br][br] 政府には、来年任期満了を迎える名護市長選や知事選を控え、移設の既成事実化を急ぎたい思惑も。菅義偉首相周辺は「地元振興策も矢継ぎ早に打ち出すべきだ」と語る。首相は官房長官当時、前回名護市長選で自ら現地に入り、自民党推薦の新人を支援して移設反対派の現職を破った経緯がある。知事選は反対派の勝利が続き、県政の奪還は宿願だ。与党幹部は「あらゆる手段を尽くす」と政治決戦を見据える。[br][br] ▽冒瀆[br] ただ移設は難関続きだ。防衛省は19年12月、辺野古沿岸部にある軟弱地盤に対応するため工期を延ばす計画見直し案を発表。事業完了には約12年を要し、返還は30年代以降にずれ込む見通しとなった。[br][br] 基地縮小を有識者で検討する県設置の「万国津梁会議」は3月、辺野古移設を「最もあり得ない選択肢」と玉城知事に提言。「普天間の危険性を少なくとも12年以上放置することになる」とし、普天間の運用停止と辺野古計画の中止を求めた。[br][br] 新たな問題も浮上している。政府は軟弱地盤改良工事のため、土砂を調達できる県内の採取地として沖縄本島南部の糸満市と八重瀬町を挙げたが、本島南部は沖縄戦の激戦地で遺骨が眠る。[br][br] この地の土砂が使われる可能性があることに、遺骨を収集する市民団体は「戦没者への冒瀆(ぼうとく)だ」と反発を強めている。「辺野古の新基地建設に遺骨のまざった土砂を使うのは、人道上許されない」。玉城知事の側近は語気を強めた。