【子ども庁構想】官邸主導の「突貫工事」 縦割り打破、実現未知数

 政府、自民党の子ども庁を巡る構図(似顔 本間康司)
 政府、自民党の子ども庁を巡る構図(似顔 本間康司)
政府、自民党内で「子ども庁」構想が急浮上してきた。菅義偉首相が二階俊博幹事長に検討を指示する一方、関係閣僚も巻き込んだ官邸主導による「突貫工事」の議論が並行する。子ども施策は厚生労働、文部科学両省などにまたがり、首相が掲げる「縦割り打破」の.....
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 政府、自民党内で「子ども庁」構想が急浮上してきた。菅義偉首相が二階俊博幹事長に検討を指示する一方、関係閣僚も巻き込んだ官邸主導による「突貫工事」の議論が並行する。子ども施策は厚生労働、文部科学両省などにまたがり、首相が掲げる「縦割り打破」の格好の材料。衆院選に向けたアピールの狙いが透ける。省庁再編につながる大がかりな見直しとなり実現は未知数だ。[br][br] ▽水面下[br] 「子ども施策は、安全安心の確保から少子化対策まで極めて多岐にわたり、省庁もまたがる」。首相は5日の参院決算委員会で、強い問題意識を表明した。[br][br] 首相は1日、自民党議員有志から子ども庁新設を求める提言を受け取った。同日、二階氏に対し「子どもの問題は非常に大事だ」と述べ、党総裁直属機関での検討を指示。次期衆院選公約への明記に向け、党内議論が近く本格化する。[br][br] 政府、与党の調整が素早く進む背景には、政府内の下準備があった。[br][br] 首相指示に先立つ3月13日の土曜日。加藤勝信官房長官は議員会館の自室に田村憲久厚労相、萩生田光一文科相を呼び水面下で会談。子ども庁新設を前向きに検討していく方針で一致した。衆院選に向け「国民受けが良い」(ベテラン議員)公約の目玉を求める党の思惑とも合致し、政府と自民党が両輪で作業を進める形が整った。[br][br] ▽弊害[br] 子ども施策は現在、大きく3府省に分かれ、弊害も指摘される。[br][br] 厚労省は保育所や障害児、虐待施策を、文科省は幼稚園や学校教育を担当。加えて内閣府は認定こども園や少子化対策、児童手当などを所管する。国民にとって分かりづらいだけでなく、3府省で調整が必要な政策テーマは、決定までに時間がかかるとの見方も。[br][br] 子ども庁新設が問題解消につながる可能性はあるものの、整理すべき課題は多い。田村厚労相は2日の記者会見で、子どもの貧困や障害児、虐待政策を挙げ「切り分けられるのか、どう包含していくのか。課題を詰めなければならない」と指摘した。[br][br] 仮に子ども庁が、保育所と幼稚園など未就学児を対象とし、虐待問題も担うことになれば、小学生以上への対応は分断されることになる。ほかの政策分野も同様の問題が残り、現状の「縦割り」との違いが見えにくい。[br][br] ▽丸のみ[br] 政府、自民党の動きには冷ややかな視線も向けられる。[br][br] 立憲民主党は旧国民民主党との合流前の旧立民時代、2019年の参院選公約で「子ども家庭省」を明記。旧民主党政権も創設を検討した経緯がある。政策の「元祖」を自負する立民幹部は「急浮上したことから分かるように、選挙に利用したいだけだ。実効性のある案がまとまるとは思えない」と切り捨てる。[br][br] 与党の公明党も「自民党の得意な『丸のみ作戦』だろう」(中堅議員)と手厳しい。[br][br] 日本総合研究所の池本美香上席主任研究員は「子ども庁新設よりも、子どもの権利を守る観点で政府から独立して意見する機関の設置を優先させた方が効果が高い」と話す。[br][br] 省庁再編はこれまでも繰り返し表面化しているが、役所の既得権にメスを入れる作業を伴うだけに強い基盤を持つ政権でないと実現できないテーマだ。関係省庁のある幹部はこう話す。「難しい調整が山積している。まずはお手並み拝見だ」 政府、自民党の子ども庁を巡る構図(似顔 本間康司)