天鐘(12月7日)

その一年を最も象徴的に表す新語・流行語。今年の大賞「3密」に、まあ、その辺だろうと納得した人は多かったに違いない。小池百合子東京都知事のジャンパー姿を何度見たことか▼感染症に振り回された一年だった。「アベノマスク」「アマビエ」「オンライン○.....
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 その一年を最も象徴的に表す新語・流行語。今年の大賞「3密」に、まあ、その辺だろうと納得した人は多かったに違いない。小池百合子東京都知事のジャンパー姿を何度見たことか▼感染症に振り回された一年だった。「アベノマスク」「アマビエ」「オンライン○○」…。ほかにも、十傑にコロナ関連が並ぶ。はやったというよりは、使うしかなかったような言葉たちだ▼似たような重い空気を感じた年がある。「3・11」「帰宅難民」「風評被害」…。9年前の2011年は震災一色に染まった。ふと思い出す「こだまでしょうか」に、あの時のつらさがよみがえる。言葉でたどれる時代の一つだ▼流行語大賞ができて30年以上たつ。年々の喜怒哀楽を映して、既に師走の恒例行事だ。過ぎた一年を精算して、新たな年へ希望を託す。言葉に限らず、各種「回顧」の役割はそんなところにもある▼悲しいかな、3密をはじめとする“コロナ語”のリセットにはほど遠い。感染者は増え続け、医療は悲鳴を上げている。その疫病は回顧の対象ではなく、日常だ。政府の対応に戸惑い、不安を抱えたままで年の瀬を迎える▼思えば、震災の年の大賞は「なでしこジャパン」だった。あれほど沈んだ世にも、サッカーの感動が勇気をくれた。今年は励ましてくれる言葉が見つからない。何より、頼りになるべき国の言葉が一番乏しかったのがむなしい。