東京都心に八戸都市圏交流プラザ「8base(エイトベース)」がオープンして約3カ月たった。来店者数は既に10万人を突破し、新型コロナウイルスが猛威を振るう中でも順調な滑り出しを見せている。[br] 屈指の水産基地である八戸港を抱え、「粉もの」をはじめ独自の食文化が暮らしを彩る。そんな全国にまだ知られざる魅力を秘める八戸圏域のアンテナショップとして認知度向上、経済効果といった期待は大きい。[br] もっとも青森県南に限らず、全国の地方部は人口減少によって先細りの一途をたどる。ここを拠点に地域活性化の新たな担い手となり得るファン獲得につなげたい。[br] 一見するとエイトベースは飲食ブースを併設した単なる店舗だが、首都圏からの誘客や移住に向けたイベントの実施など多面的な機能を持つのが特長だ。[br] 圏域ゆかりのゲストが参加者と双方向で交流するファンミーティングはこれまで7回開かれ、文化や経済といった分野の第一線で活躍する出身者が登場。実際にこれまで特段の縁を持たなかった人も散見され、「紹介された場所に行ってみたい」などと好意的な反応を寄せる。[br] 特産品自体のポテンシャルは高くとも、消費者を「待ちの姿勢」で取り込む従来のアンテナショップの姿勢では訴求力に劣る面もあろう。まして都内には自治体主導型だけで80ほどの店舗が軒を連ね、PRにしのぎを削る。「行けば何か面白いことをやっている」と思わせる仕掛けを常に意識してほしい。[br] コロナ禍を契機に多様な働き方が浸透する中、地方に改めて目を向けようという機運も施設活用の手掛かりとしたい。[br] 高い家賃を支払ってまで感染リスクに脅かされる首都圏に住まずとも、リモートワークを活用できれば居住地を柔軟に選べる。通勤がなくなれば家族との団らんや趣味に時間を充てられる―。こうした価値観の変容は各種調査にも表れ、内閣府によれば東京23区内に住む20代の35・4%が地方移住への関心が高まったと回答した。[br] 着実に増えつつある需要を見据え、移住対策に本腰を入れる県内の自治体も出始めている。他方で八戸圏域はエイトベースの整備により、図らずも首都圏で魅力を発信するツールを手にしたと言えよう。[br] いかに他地域との差別化を図って人材を呼び込むのか。逆境の中に潜む好機を逃さず、販売だけでなく広い視点でエイトベースの持ち味を最大限発揮しなければならない。