時評(7月10日)

巨大IT企業の影響が強いインターネット広告の規制に、政府が乗り出す。ネット広告は企業などの広告費の3割を占めるまでに成長したが、料金体系の不透明さや閲覧回数水増しなど見過ごせない問題が出ている。 経済のデジタル化に伴い、取引の透明化新法、個.....
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 巨大IT企業の影響が強いインターネット広告の規制に、政府が乗り出す。ネット広告は企業などの広告費の3割を占めるまでに成長したが、料金体系の不透明さや閲覧回数水増しなど見過ごせない問題が出ている。[br] 経済のデジタル化に伴い、取引の透明化新法、個人情報保護法改正が先の国会で成立。政府は独占禁止法適用を拡大する新指針と3点セットで、公正なデジタル取引の枠組みを策定した。ネット通販などで市場支配力を増す巨大ITから、出店業者や消費者を守るのが狙いだ。[br] ネット広告に対しても、新規制を盛り込んだ最終報告を年末にまとめ、法制化を目指す。巨大ITの「勝者総取り」を防ぎ、公正な競争を図るため透明性を高めるルール化を求めたい。[br] 商品や企業広告に投入される広告費は、現在年約7兆円に上る。テレビ、新聞、雑誌、ラジオの4媒体の広告に勢いがない中で、ネット広告は右肩上がりの好調を持続。昨年は2・1兆円と、テレビの1・9兆円を抜いて初めて首位に立った。[br] その背景には、プラットフォーム(PF)を管理する巨大ITの強みがある。紙面や時間が限られる4媒体の広告と違い、ネット空間上に、大手から小規模事業者まで自在に広告を表示。また検索連動型で個人の好みに合わせるターゲティング広告も大きな武器だ。日本も含めた世界全体でのネット広告市場は、グーグルが圧倒的に強く、フェイスブックと合わせたシェアは5割以上と寡占化している。[br] しかし、内閣府が先月まとめたネット広告を巡る中間報告では、問題点も多い。巨大ITは、広告主と、広告枠を売る媒体の仲介手数料を得る一方、自社媒体も持つが、PFのデータ運用がブラックボックス化。広告主が払う費用が、適正に媒体側に配分されていないとの不満や、自社媒体を優遇しているとの批判が多い。最終報告には、透明な料金体系などのルール化を明記すべきだ。[br] 広告費算定の基となる閲覧数の水増し横行や商品にマッチしないサイトでの掲載も明らかになった。このため第三者機関による監視制度の導入も有力な検討課題となる見通し。ターゲティング広告には、消費者の7割が煩わしいと感じており、初期設定の禁止案も浮上している。[br] 欧米当局はグーグルに対し、競争相手の広告掲載締め出しなどを理由に巨額の制裁金を科し、広告分野の分割論も台頭している。巨大IT規制強化に連携した日本の監視網整備を期待したい。