【世界のJOMONへ】第3部 知られざる縄文の魅力(4)文様

佐京三義さんが“復元”した色鮮やかな遮光器土偶=5月、階上町
佐京三義さんが“復元”した色鮮やかな遮光器土偶=5月、階上町
縄文の文様入りのコーヒーカップや食器、アクセサリー、土偶、土器…。階上町道仏の佐京窯には、縄文をモチーフにした作品がずらりと並ぶ。手掛けるのは佐京三義さん(61)と和子さん(66)夫妻。三義さんは「豊かな感性で文様を描いた縄文人に憧れている.....
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 縄文の文様入りのコーヒーカップや食器、アクセサリー、土偶、土器…。階上町道仏の佐京窯には、縄文をモチーフにした作品がずらりと並ぶ。手掛けるのは佐京三義さん(61)と和子さん(66)夫妻。三義さんは「豊かな感性で文様を描いた縄文人に憧れている」と話し、日々制作に励む。[br] 縄文の文様が入った焼き物を作ろうと思ったきっかけは、20年ほど前、是川遺跡で土器作りを体験したことだった。「上手だって褒められたのがうれしくて」。作り方や材料を覚えて自宅でも作るようになった。[br] 元々、町内には縄文遺跡が数多くあり、子どものころは、やじりや土器のかけら拾いが日常の遊びだった。「畑で取っては友達と自慢し合っていた。縄文に特別な興味があったわけではないが、なじみがあったし、好きだった」と振り返る。[br] 土器作りの趣味が高じて、自宅に手作りの窯を構えた。やがて東京で陶芸教室を開いていた和子さんと出会い、意気投合。和子さんが作ったカップなどの陶器に三義さんが文様を描き、二人三脚で“縄文作品”を作り続けた。[br] 文様と一言でいっても、S字のような「入組文」や「工」の形の「工字文」など多くの種類がある。「一見、簡単そうに見えるが書くのも、土器に写すのも難しい」と三義さん。文様の構成を理解するために、自分なりに解読して、陶器に正確に模写。繰り返しているうちに、ますます文様の魅力に引かれていった。[br] やがて、つがる市の亀ケ岡石器時代遺跡の「遮光器土偶」を作りたいと考えた。ただレプリカを作るのではなく、「縄文人が実際に目にしていた物を作りたい」と発起。土偶は片脚がなく、黒っぽい色をしていたが「きっと最初の状態は脚もそろい、漆が塗られていたのだろう」と、黒に赤色の漆が引き立つ当時の色合いの土偶を“再現”した。[br] アーティストや芸術家の中には、縄文を自分なりにアレンジして楽しむスタイルもある。しかし、三義さんは縄文人が描いた文様を正確に写実し、土偶もできるだけ当時の状況に近い形で復元することをモットーにしている。そこには「日々使う土器などに美しい文様を付けて暮らした縄文人の心を知りたい」という思いがあるのだという。[br] 自然を敬い、共生していた縄文人。文様の意味は、いまだにはっきりと分からないが、その生き方や精神は肌で感じることができる。[br] 三義さんは「道具に合理的な機能だけではなく、美術的な視点を施していた縄文人。そんな感性豊かな人々が暮らした時代に憧れながら、これからも魅力を伝えていきたい」と話した。佐京三義さんが“復元”した色鮮やかな遮光器土偶=5月、階上町