【新型コロナ】林業に打撃、行き場失う原木/関係者「どこにも出荷できない」

木材加工工場に出荷できず、行き場を失う原木。梅雨による材質劣化が懸念される=5月25日、十和田市
木材加工工場に出荷できず、行き場を失う原木。梅雨による材質劣化が懸念される=5月25日、十和田市
新型コロナウイルスの影響で、青森県内の原木が木材加工工場へ届けられずに行き場を失っている。首都圏の住宅工事の遅れや、梱包(こんぽう)用の需要が急激に減少しているためだ。県によると、今春以降に出荷予定だった6万立方メートル分の流通先が決まらず.....
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 新型コロナウイルスの影響で、青森県内の原木が木材加工工場へ届けられずに行き場を失っている。首都圏の住宅工事の遅れや、梱包(こんぽう)用の需要が急激に減少しているためだ。県によると、今春以降に出荷予定だった6万立方メートル分の流通先が決まらず、新たな原木の生産が滞っている。梅雨に入ると材質劣化も懸念され、林業関係者は「どこにも出荷できない。これからどうなるか本当に分からない」と頭を悩ませる。[br] 県林政課によると、近年、県産木材の生産量は上昇傾向だった。2018年度は110万立方メートルと過去10年で最高を記録。19年度も同様の水準をキープできる見通し。[br] 比内一道課長は「国の方針により国産木材の積極的な活用が進み、全国的に大型木材加工工場やバイオマス発電所が整備され、生産量は少しずつ増加していた」と好調だった時期を振り返る。[br] 建築に使用するスギの生産が盛んな上北地域の林業事業者は、かつてない状況に悲鳴を上げる。[br] 「こんな厳しい状況は今までなかった。リーマンショックの時でも多少は木を売ることができていた」[br] 十和田市の下久保林業(下久保眞信代表)下久保仁志専務(43)は下を向く。書き入れ時の3~5月に向けて準備した原木の流通先はまだ決まってない。[br] 通常、原木は伐採後になるべく早く加工工場に運搬する。春から夏にかけて売る予定だった4千~5千立方メートル分の原木は、山の中にある保管場所などに残したままだ。空調設備のない野外に原木を数カ月間にわたり置くことは今までなく、品質維持が困難な状況となっている。[br] 同社は収益増に向け、動き始めたばかりだった。今年に入り5人を新たに採用。6月中には昨年購入を決めた25トントラックが納車される。[br] さらに、重機のリース代も毎月かかり、多額の固定費がのしかかる。下久保さんは「木は長年かけて成長してから、木材として出荷するまで計画を立てて販売する。新型コロナによる本当の損害は、しばらく後に出てくると思う」と顔を曇らせた。[br] 県森林組合十和田木材流通センター(同市)では6月2日現在、原木約1500立方メートルの出荷先が決まってない。担当者は「建築用木材は価格が高く、安いチップなどに代用できない。新たな受け入れ先を探すのは難しい」と語る。[br] 現状を打開しようと、業界団体は県や県議会に対し、流通対策の実行や事業者への経営支援を要望。これに対し、県林政課は「原木の運送費補助など、国の助成金を活用した支援を考えたい」と前向きな姿勢を示している。木材加工工場に出荷できず、行き場を失う原木。梅雨による材質劣化が懸念される=5月25日、十和田市