天鐘(3月1日)

第1次世界大戦終盤の1918年春に発生し、世界で5億人が感染、1億人が死亡した史上最悪の「スペイン風邪」。発生源の米国では、先手を打った都市は無策の都市に比べ、死者を8分の1に抑えることができた▼デトロイト付近で発生した強い毒性の新型感染症.....
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 第1次世界大戦終盤の1918年春に発生し、世界で5億人が感染、1億人が死亡した史上最悪の「スペイン風邪」。発生源の米国では、先手を打った都市は無策の都市に比べ、死者を8分の1に抑えることができた▼デトロイト付近で発生した強い毒性の新型感染症は、戦勝パレードの人混みから拡大。何の対策も打たず放置したフィラデルフィアでは感染ピークのわずか1週間で、10万人当たり250人もの死者を出した▼一方、セントルイスでは事態を公表して学校や劇場などを閉鎖。集会も禁じた結果、死者を同30人に封じ込めた。ニューヨークも的確な検疫と隔離で制圧できたが、逆に時期を見誤ったボストンは大波をかぶった▼対策が明暗を分けた歴史的実証例である。感染が拡大する新型肺炎で、安倍首相は全国の小中高校等に臨時休校を求めたが、どうやら実証例が下敷きになったようだ▼ニューヨーク市が動いたのはピークの35日前。市民にリスクを周知、着々と医療体制を整えた上で敵と対峙(たいじ)した。こちらは“笊ざるのような水際”と検査を阻(はば)む“鉄壁の態勢”に憤っていたら、突然「国難」だという▼この件初の記者会見で首相は「2週間が瀬戸際」「あらゆる手段を尽くす」と理解を求めた。無論、応えるが、物事には手順がある。放つ矢が唐突過ぎて心配になる。ニューヨークの好例をきちんと踏んだ上での決断だと思いたい。