時評(5月21日)

猛威を振るう新型コロナウイルスが、地方の経済活動にも暗い影を落としている。その打撃は2008年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災を上回るとされる。 特に苦境に立たされているのが飲食店だ。全国的に感染者数が減少傾向に転じたとはいえ、先.....
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 猛威を振るう新型コロナウイルスが、地方の経済活動にも暗い影を落としている。その打撃は2008年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災を上回るとされる。[br] 特に苦境に立たされているのが飲食店だ。全国的に感染者数が減少傾向に転じたとはいえ、先行きは不透明。第2波、第3波への懸念を抱えながら営業を続けている。[br] 北奥羽地方では3~4月、小中学校の一斉休校、青森県内初の感染者確認、緊急事態宣言の全国への拡大と、新型コロナ関連で動きがあるたびに自粛ムードが強まり、夜の繁華街の人出が減少した。多くの飲食店は自主的に臨時休業し、大型連休明けに営業を再開しているが、客足が戻ったとは言いがたい。[br] 書き入れ時の歓送迎会シーズンを逃し、2カ月以上にわたって収入の大幅減に見舞われた。八戸商工会議所が4月に実施した影響調査では、「家賃が払えなくなる」「廃業もあり得る」との切実な声が上がる。[br] 飲食店は自助努力を続けている。テークアウトの対応を強化したほか、タクシーなど異業種と連携してデリバリー事業を展開。料理人が利用客の自宅に出向き、本格的なコース料理を提供する出張レストランもある。暗闇の中で光明を見いだそうと収入源の多角化に取り組む。[br] 経済団体も業界のサポートに乗り出した。八戸商工会議所青年部は、緊急支援プロジェクトとして、参加店で利用できる10%の特典が付いた「はちのへ支援クーポン」を発行。店側が運転資金を確保できる仕組みを作った。[br] 市中感染が確認されておらず、緊急事態宣言の対象からも外れているとはいえ、新型コロナウイルスの終息が見通せないことから、地方でも外出を自粛する空気は依然として根強い。感染症との戦いは長期戦ともいわれる。事態が長引くほどに、営業継続を断念する店が増えるのは必然だ。[br] 飲食店は単なる憩いの場ではない。若者を中心とした雇用の受け皿であり、観光客が地元の食文化を知る施設でもあり、何より街全体の活気を生んでいる。感染終息後に地元経済が再興を図るため、なくてはならない存在といえよう。[br] 感染防止に向けて、飲食店は「3密」を回避する取り組みを進めている。店に入らない場合でも、1回の食事をテークアウトの弁当にするだけで力強い支援になるだろう。地元の大切な場所を守るため、支援の輪が広がることを期待したい。