時評(4月5日)

原発の使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを再利用して発電するプルサーマル。この発電によって生じる「使用済みMOX燃料」について、経済産業省は2030年代後半の再処理技術の確立を目指す考えを示した。しかし、MOX専用の再処理工場建設のめ.....
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 原発の使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを再利用して発電するプルサーマル。この発電によって生じる「使用済みMOX燃料」について、経済産業省は2030年代後半の再処理技術の確立を目指す考えを示した。しかし、MOX専用の再処理工場建設のめどは全く立っておらず、現実味に欠ける。[br][br] プルサーマルは大きな課題を抱えている。電気事業連合会は、プルトニウムを燃やす原発の数を「30年度までに少なくとも12基」とする新たな利用計画を公表。各電力会社のプルトニウムの年間利用量を合計すると、7・1~7・7トンとなり、六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場がフル稼働した際に製造される6・6トンを上回る。数字上は生産と消費のつじつまが合うが、プルトニウムを燃やす原発の多くは東日本大震災以降、再稼働できておらず、実現性に乏しいと言わざるを得ない。[br][br] 核のゴミの問題も見逃せない。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す際、使い道のない高レベル放射性廃棄物が出る。使用済みMOX燃料の再処理も同様で、いずれも最終処分場が必要だ。北海道の2町村が処分地の調査に名乗りを上げたが、道には核のゴミの受け入れを拒否する条例があり、処分場の見通しは極めて不透明だ。[br][br] そして最も問題なのが原子力政策の硬直化だ。全国の多くの原発で使用済み核燃料の保管場所が飽和状態に近づいており、再処理工場が稼働しなければ、原発も動かしにくい構図となっている。さらに青森県は使用済み核燃料の全量再処理をやめれば、燃料を発生元の原発に返す構えで、ますます再処理事業は止められない状況だ。[br][br] 「青森県のせいで政策が変更できない」。こうした誤った認識が広がることだけは避けなければならない。国は乾式貯蔵など使用済み核燃料の行き場をしっかり確保し、さまざまな議論ができる土壌を整えるべきだ。[br][br] 1970年代、国が核燃料サイクルを始めた理由は、資源に乏しい日本のエネルギー不足を補うためだった。しかし、再生可能エネルギーなどが普及する今、サイクルの大義は、いかにプルトニウムを余らないよう消費するかに変わってしまった。[br][br] 国は原子力政策について、どこに向かい、何をゴールとするのか全体像を示すべきだ。そうしなければ、県民の理解は到底得られない。最近、原子力施設が集中立地する下北半島で、原子力との共存を前面に押し出してきた町村長の落選が相次いだのも無関係ではないはずだ。