時評(2月26日)

昨年1年間で女性の自殺者数が急増した。男性が11年連続の減少だったのに対し、女性は前年より大きく増え、過去5年で最多になった。 女性が死を選ぶ要因として経済面での不安のほか、心身の健康問題や人間関係などが挙げられる。新型コロナウイルス感染の.....
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 昨年1年間で女性の自殺者数が急増した。男性が11年連続の減少だったのに対し、女性は前年より大きく増え、過去5年で最多になった。[br][br] 女性が死を選ぶ要因として経済面での不安のほか、心身の健康問題や人間関係などが挙げられる。新型コロナウイルス感染の拡大がもたらす社会全体の息苦しさ、外出自粛などによる孤立感との関連も指摘される。[br][br] 孤立や自殺を防ぐ手だてを講じるため、菅政権は「孤独・孤立対策担当室」を新設、支援活動を重ねてきた民間関係者らとも意見交換を始めたが、具体策はこれからの課題だ。実態把握と科学的な要因分析を継続し、有効な施策を進めてほしい。[br][br] 警察庁の統計では、2020年の自殺者数は約2万1千人で前年より約900人増え、09年以来11年ぶりに増加した。男性は約1万4千人とやや減ったものの、女性は約7千人で前年より900人ほど多くなった。自殺者は夏ごろから増え、女性は6月以降毎月、前年同月の数字を上回った。[br][br] 女性の自殺の動機ではうつ病などの健康問題、家庭内の不和が増えているという。コロナ禍の長期化で外出自粛や在宅勤務を続けた結果、元々抱えていた体調や育児などの悩みを親族や友人らに打ち明ける機会を失ったケースも想定される。「巣ごもり生活」の悪影響か、ドメスティックバイオレンス(DV)の相談件数も大幅に増加した。[br][br] 飲食、宿泊などコロナ不況が直撃した業種では非正規労働者らの解雇・雇い止めが止まらず、失業や減収で生活に困窮する女性は多い。支援策の実施に加え、さまざまな事情と自殺増加の因果関係を究明し的確な対策につなげる必要がある。[br][br] 一方、昨年は小中高校生の自殺者数も約480人と過去最多を記録した。女子高校生の自殺増が目立ち、コロナ対策とされた一斉休校が明けた時期から増えている。なぜ子どもらが自ら命を絶つのか。長期休校による学業や進路への不安との関連など詳しい調査を望む。若者たちが心を開きやすいよう会員制交流サイト(SNS)を活用する相談体制の整備も急務だ。[br][br] 年間自殺者が3万人を超えていた06年に自殺対策基本法が制定され、国や自治体、民間の取り組みが一定の成果を上げてきた。だがコロナ禍の中で自殺は再び増加に転じ、新たな対応も迫られる。孤独対策を担当する坂本哲志1億総活躍担当相は、自殺や子どもの貧困問題などで各省庁の司令塔になると語る。ぜひ実効を上げてほしい。