天鐘(11月3日)

秋の味覚・マツタケが絶滅危惧種の仲間入りをしたのは今年の夏のこと。この秋は岩手県などで豊作だったらしいが、全国的に見れば、採れる量は年々減っている▼世界の松林の面積は過去50年間で3割以上減少したそうだ。森林伐採などで生息環境が変わったのだ.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 秋の味覚・マツタケが絶滅危惧種の仲間入りをしたのは今年の夏のこと。この秋は岩手県などで豊作だったらしいが、全国的に見れば、採れる量は年々減っている▼世界の松林の面積は過去50年間で3割以上減少したそうだ。森林伐採などで生息環境が変わったのだろう。食卓から一層遠のきそうな高級食材を思いながら、この秋はもう一つの深刻な“森の異変”も気になっている▼全国で相次ぐクマの出没だ。春以降の目撃情報は、ここ5年で最多だそうだ。里にぬっと現れ、悪さを働く。食害にとどまらず、人へも危害を加えるから怖い。石川県ではスーパーに侵入して大騒ぎにもなった▼近年、山の餌が少ないらしい。さらには過疎化や高齢化で本来、人間が使っていた場所が元の森林に戻り、クマの行動範囲が広がったとの分析がある。人の暮らしの変容は、時に森の動植物たちを戸惑わせる▼写真家の宮崎学さんは野生動物の生態を追う。融雪剤の塩をなめにやって来るシカ、その死骸を食べて生き延びるクマ―そんな知られざる実態もあるそうだ。「クマ、シカ、サル、イノシシは確実に増えている」と宮崎さんは言う▼腹をすかせたクマにしてみれば、何も好んで人前に出てきたわけではないと言いたかろう。本来、小心な動物だという。〈山が荒れ熊が荒れつつ秋終る〉相生垣瓜人。人と野生の共存の道を真剣に探る時期に来ている。