6年超の審査、合格視野も前途多難 品証体制甘さ露呈、サイクル政策不透明感強める/原燃再処理工場

日本原燃の品質保証体制も議論になった再処理工場の審査だが、合格しても前途多難だ(写真はコラージュ。工場を背景に左は更田豊志委員長、右は審査に臨む原燃社員)
日本原燃の品質保証体制も議論になった再処理工場の審査だが、合格しても前途多難だ(写真はコラージュ。工場を背景に左は更田豊志委員長、右は審査に臨む原燃社員)
使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)の完成に必要な審査合格が現実味を帯びてきた。ここに至るまでの6年4カ月に及ぶ議論であぶり出されたのは、品質保証体制に対する日本原燃の根深い甘さだ。一方、この間も核燃料サイクル政策は不透明感を強めた。原燃が.....
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 使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)の完成に必要な審査合格が現実味を帯びてきた。ここに至るまでの6年4カ月に及ぶ議論であぶり出されたのは、品質保証体制に対する日本原燃の根深い甘さだ。一方、この間も核燃料サイクル政策は不透明感を強めた。原燃が悲願の合格にこぎ着けても、目標とする2021年度上期の工場完成は厳しさを増しており、むしろ多難な前途が浮き彫りになる。[br] 原燃に当てはめた場合の品質保証とは、再処理をはじめとする技術を確立した上で、その運営に必要な社員の能力を組織的に担保し、安全管理の行き届いた姿を指す。言い換えれば、原燃という会社の根幹をなす要素だ。[br] ところが、ほころびは2014年1月に始まった審査の中で度々垣間見られた。最たる例は審査の長期化を招く一因となった、3年前に発覚した非常用電源建屋の雨水流入問題だ。[br] 原因は、配管が貫通する建屋壁面の隙間を埋めるコーキングが劣化していたという比較的軽微なものだった。しかし、調査の過程で屋外の重要設備が14年間にわたり未点検だったことが判明。作業員が長年、隣接する別の設備を誤って点検していたのを誰も見抜けなかった二重の致命的ミスが背景に横たわっていた。[br] 異例の審査中断にまで陥った当時を振り返り、増田尚宏社長は「現場に密着した仕事を社員全員にお願いした結果、保安活動がどうあるべきかを頭の中でイメージできるようになってきた」と改善の手応えを口にする。一方で品質保証を裏付けるはずの人的、組織的要因が絡む不手際は後を絶たない。[br] 昨年8月に起きた排風機の故障は、過去のメンテナンス時に外部から指摘があったにもかかわらず、担当者が仕様を下回る部品に独断で交換。社内報告も怠った結果、内部の負圧を保って放射性物質の流出を防ぐという再処理工場の“生命線”が一時停止するまで社内の目をかいくぐり、「たちが悪い」(原子力規制委員会の更田豊志委員長)と批判を浴びた。[br] 終盤の審査でも申請書類の誤記や記載漏れといったミスが続発した。規制委関係者は「(過去の改善で)つぶし切れていない。身になっていない部分があるのではないか」と眉をひそめる。[br] 審査開始から6年余り経過する中、原燃を取り巻く環境は大きく変わった。その一つが高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)の廃炉に伴う高速炉開発の後退だ。[br] 再処理で取り出すプルトニウムの有望な使い道が事実上途絶える一方、通常の原発で再利用するプルサーマル計画も停滞。もっとも、原発再稼働が進まない上に廃炉が加速する状況では計画そのものが「絵に描いた餅」となりかねない。[br] 内閣府に設置された原子力委員会は、18年に策定した指針でプルトニウム保有量の削減方針を初めて明記した。資源小国の日本で夢の準国産エネルギーを実現する―というサイクル政策の意義は揺らぎ、「もんじゅの廃炉はサイクルの『終わりの始まり』だ」と吐き捨てる文部科学省の元幹部もいた。[br] 再処理工場の審査を巡り、最短で5月にも見込まれる事実上の合格。ただ、21年度上期の完成を目指す前提条件となる本年度の安全対策工事完了までに時間的猶予は少ない。「工夫によって計画通りの完了を目指して努力したい」と話す増田社長は早速、正念場を迎えることになりそうだ。日本原燃の品質保証体制も議論になった再処理工場の審査だが、合格しても前途多難だ(写真はコラージュ。工場を背景に左は更田豊志委員長、右は審査に臨む原燃社員)