天鐘(5月8日)

詩人の丸山薫に「まんさくの花」の一遍がある。〈まんさくの花が咲いた/と/子供達が手折って/持ってくる/まんさくの花は淡黄色の粒々した/眼(め)にも見分けがたい花だけれど〉▼読み進めると、北国の山間部であることが分かる。雪に埋もれていたふるさ.....
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 詩人の丸山薫に「まんさくの花」の一遍がある。〈まんさくの花が咲いた/と/子供達が手折って/持ってくる/まんさくの花は淡黄色の粒々した/眼(め)にも見分けがたい花だけれど〉▼読み進めると、北国の山間部であることが分かる。雪に埋もれていたふるさとにやっと訪れた春を、小さく、頼りない花に知る。枝を一本折って喜んで駆けてくる子供たち。ほんわかと心温まる情景だ▼さて、今年の春の花たちは災難である。福岡県八女市にある国指定天然記念物のフジの花が満開のまま刈り取られてしまったという。千葉県では公園のチューリップ80万本が切り取られた。いずれもコロナのとばっちりである▼美しく咲いた花に人が集まれば「密」になってしまう。断腸の思いで入れたはさみに違いない。うれしくて子供が思わず折った一本ならほほえましくもあるが、こちらは切ないニュースである▼気の毒なのは野にある花に限らない。学校行事の縮小や結婚式、歓送迎会などの中止で花の需要が落ち込んでいる。せっかくきれいに咲きながら、出番のないまま捨てられてしまう花々が増えているそうだ▼まもなく母の日。今年は5月全体を「母の月」にとの提案がある。業界の苦肉の策だが、ここはひとつ乗ってみてもいい。花たちへの罪滅ぼしをカーネーションに込めて。そして学校が休みの間、大忙しだったお母さんへの感謝を乗せて。