時評(3月8日)

「タラの里」として知られるむつ市脇野沢地区の2019年度マダラ漁が、2月で終了した。漁獲量は1042トンで、30年ぶりに千トンを突破。1994年度から20年間、100トン割れの不漁が続いたが、ここ数年は500トン以上で推移しており、待望の産.....
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 「タラの里」として知られるむつ市脇野沢地区の2019年度マダラ漁が、2月で終了した。漁獲量は1042トンで、30年ぶりに千トンを突破。1994年度から20年間、100トン割れの不漁が続いたが、ここ数年は500トン以上で推移しており、待望の産地復活といえよう。[br] 一方で、価格は下落傾向にある。せっかくの豊漁も漁業者の収入増につながっていない。付加価値を高めるなど、販売対策の工夫が必要だ。[br] 漁場となる陸奥湾はマダラの産卵場所で、ふ化した稚魚は5~6月ごろに陸奥湾を出て釧路沖で成長。4年で成魚になり、冬に産卵のために戻ってきたところを捕獲する。[br] 漁獲量は89年度の1305トンをピークに減少し、05年度に6トンまで落ち込んだ。50軒ほどいた漁業者の30軒が廃業、同市の脇野沢村漁協も破綻寸前に陥った。同漁協などは資源保護に力を入れ、漁獲量回復を待った。[br] 状況が好転したのは14年度。199トンと21年ぶりに100トン台に回復後、以降は毎年500トン以上を維持。同漁協によると、豊漁は稚魚の発生が多い状況が続いているため。陸奥湾で毎年調査を続ける北大の分析では、22年度までは漁獲が期待できる見込みだ。[br] これまでも中長期で豊漁と不漁を繰り返してきた同地区。稚魚のふ化と成長は低水温ほど良好とされ、今後も注視したい。[br] 漁獲量が増えたものの、19年度の平均単価は低迷した。全国的に豊漁となったためで、1キロ当たり193円と、過去30年間で初めて200円を割り込み、最低となった。さらに船の燃料、発送の箱代や氷代、運賃といった経費は当たり前に発生するため、漁獲増もほとんど収入に結び付いていないのが実情だ。[br] 価格上昇を目指し、同漁協は県漁連流通PRセンターでの販売などを通じ、売り込みに努める方針だ。[br] バイヤーからは切り身での出荷を求める声が根強い。ただ、約2カ月間の漁期のために加工場を建設することは非効率で、機械導入にも数億円かかるため、同漁協単独で加工事業に乗り出すことは難しいという。そうであれば、加工業者や飲食店などと組み、新商品を開発するなどし、付加価値の創出や消費拡大ができないか。[br] 単価下落の背景には、核家族化進展に伴う食生活の変化もあるとされる。消費者ニーズに対応できなければ、今後も価格上昇は望めない。他産業との連携など、さまざまな可能性を検討してほしい。