時評(2月23日)

青森県の2020年度一般会計当初予算案が発表された。三村申吾知事が5期目に入り初めて編成した予算案は、従来からの財政健全化路線を貫くもので、基金を取り崩さない収支均衡型財政への強いこだわりを感じさせた。 三村氏は03年の知事就任以来、財政再.....
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 青森県の2020年度一般会計当初予算案が発表された。三村申吾知事が5期目に入り初めて編成した予算案は、従来からの財政健全化路線を貫くもので、基金を取り崩さない収支均衡型財政への強いこだわりを感じさせた。[br] 三村氏は03年の知事就任以来、財政再建団体への転落が危惧される状況からの脱却と持続可能な財政構造の構築を目指し、大規模施設建設の一時凍結や職員数削減といった行財政改革に傾注してきた。[br] 結果、財政運営の一つの完成形として追い求めた収支均衡は、17年度から4年連続で実現する見通しとなった。知事と財政当局は「これまでの財政健全化努力により、持続可能な財政基盤の確立に向けて前進できた」と強調する。[br] もっとも、県財政の状態は万事良好ではなく、改革はまだ道半ばだ。借金に当たる県債の発行額は7年連続で減少し、県債依存度は9・1%まで下がる見込みだが、残高は1兆円を超える。一方の基金残高は351億円で、高齢化の進行や施設老朽化、自然災害に備えることを考えれば心もとない。[br] 総額6816億円の20年度予算案の歳入構成を見ると、県税や地方消費税清算金などの自主財源の割合が40・0%で、地方交付税や県債などの依存財源は60・0%。中でも地方交付税は全体の31・4%を占め、県財政の「生命線」となっている。自前の財源に乏しく、国の動向次第で窮地に陥る構造だ。[br] 財政の弾力性を示す経常収支比率も好ましくない。昨年9月に公表された18年度普通会計決算での値は96・3%で、3年連続の悪化となった。この比率が高いほど独自の政策などに使える財源が少なく、財政構造が弾力性を失っていることを意味する。[br] 今後、地域の持続性を向上させる施策を展開していくためにも、一層の経費節減と自主財源の確保に向けた取り組みが必要だ。知事は人口減少克服を目指し、事業の選択と集中を行ってきたが、減少に歯止めはかかっておらず、農林水産業をはじめ、県内各産業の担い手不足は深刻化している。[br] 行財政改革を継続し、施策の質的充実に努めなければなるまい。新年度予算案には若者の定着や雇用創出、経済振興などを目指す事業が並ぶが、成果を上げなければ意味がない。予算案を審議する県議会定例会は25日に開会するが、人口減少時代の中で活路を見いだすよう、慎重審議と活発な議論を求めたい。