時評(2月15日)

新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の拡大が止まらない。最近の海外渡航歴がなく、感染経路の不明な患者が相次いだ。国内初の死者となる神奈川県の80代女性の感染が死後に分かった。女性の義理の息子で東京の70代男性タクシー運転手の感染も.....
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 新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の拡大が止まらない。最近の海外渡航歴がなく、感染経路の不明な患者が相次いだ。国内初の死者となる神奈川県の80代女性の感染が死後に分かった。女性の義理の息子で東京の70代男性タクシー運転手の感染も分かった。散発的に見えない感染があったのだ。国内で流行する兆しといえる。[br] 国内流行を前提にした対策に重点を移すべきだ。水際対策は分かりやすいが、新型肺炎のように潜伏期間がある場合、万全でなかった。しかも、1月下旬に検疫を強める前に多数の感染者が流行地の中国・武漢から来日して感染源になった疑いは残る。1月末までに発症した患者が多く、国内感染の連鎖は早かった。[br] 水際対策に力を注ぐあまり、国内感染者の検査が遅れて見逃してきたのではないか。当面は、患者が濃厚に接触した人々の健康の観察が重要である。国内でこれまで確認された濃厚接触者で感染者が見つかったケースは少ない。接触者や周りの冷静な協力を求めたい。[br] 医師の感染も初めて判明した。和歌山県の50代男性外科医が発症後に診療に当たっていた。体力の弱った患者への院内感染は最も怖い。外科医が勤務する病院を外来受診した70代男性の感染も確認された。治療に全力を挙げてほしい。[br] タクシー運転手の感染も気になる。タクシーは狭い密閉空間で感染のリスクが高い。身近な危険から身を守るため手洗いを習慣化し、社会全体で感染予防力を上げたい。[br] ウイルスの特徴も浮かんできた。病原性が低く、大半は対処できる。通常の風邪の対応が基本になる。ただ、高齢者や持病のある人は重症化しやすく、重症者を救う医療態勢の整備が欠かせない。また、どの医療機関でも迅速に検査できる方法の開発は急務だ。[br] 水際対策は劇場型で、危機管理を訴えるため政府が取り組みやすい。56カ国・地域の乗客乗員約3500人が乗ったクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で集団感染が起き、船内に14日間留め置く船舶検疫が横浜港で行われているが、柔軟な対応が望ましい。[br] 検疫に医療資源を投入し過ぎて国内対策をおろそかにしてはならない。2009年の新型インフルエンザの教訓だ。中国では患者と死者の増加が今も加速し、日本が影響を最も受けている。大規模な新興感染症の対策は状況に応じて的確に変える必要がある。