天鐘(1月13日)

津軽には七つの雪が降るとか―。こな雪、つぶ雪、わた雪、ざらめ雪、みず雪、かた雪、氷雪…。昔、そんな歌があった。太宰治の『津軽』の冒頭に歌詞のヒントを得たらしい▼積もった雪の呼び名もあるから、全てが「降る」ではないにせよ、今年はその七つが一度.....
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 津軽には七つの雪が降るとか―。こな雪、つぶ雪、わた雪、ざらめ雪、みず雪、かた雪、氷雪…。昔、そんな歌があった。太宰治の『津軽』の冒頭に歌詞のヒントを得たらしい▼積もった雪の呼び名もあるから、全てが「降る」ではないにせよ、今年はその七つが一度に襲ってきたような冬だ。それこそ津軽では連日の雪かきに悲鳴が上がっている。冬の風情などあったものではない▼八戸地方も気温が上がらず、まだ至る所に雪が残る。先日、轍(わだち)にはまった車で渋滞が起き、少しの間だが立ち往生を経験した。いつ動くか分からぬ車内で一人待つ。そのうち、言いようのない不安がこみあげてきた▼ドカ雪の北陸・新潟では、雪が市民の命を脅かしている。除雪作業や車の中などで、10人以上が亡くなった。空き家が倒れ、村が孤立する。逃げ場のない「白魔」との闘いを今日も強いられる人たちがいる▼豪雪地帯では、数々の悲惨な雪の事故が語り継がれる。1938(昭和13)年1月1日、新潟県十日町の映画館の屋根が落ち、69人が犠牲になった。折しも前日までの大雪が一段落、正月休みを楽しむ人たちだった▼供養のために建立された「深雪観音」。そこには〈雪地獄父祖の地なれば棲(す)み継げり〉の句がささげられた。地獄のような雪に立ち向かいながらふるさとに暮らす。〈降りつもる雪、雪、雪、また雪よ〉。手加減してくれと祈る。