天鐘(9月20日)

独創的なファッション。歯や背中でギターの弦をはじいて、果てには燃やしてしまう。何よりも太くうねる歪(ゆが)んだ音が刺激的だ。ジミ・ヘンドリックスは伝説のミュージシャン。音楽史に刻まれた鮮烈な記憶である▼叫びにも嘆きにも聞こえる。増幅した音響.....
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 独創的なファッション。歯や背中でギターの弦をはじいて、果てには燃やしてしまう。何よりも太くうねる歪(ゆが)んだ音が刺激的だ。ジミ・ヘンドリックスは伝説のミュージシャン。音楽史に刻まれた鮮烈な記憶である▼叫びにも嘆きにも聞こえる。増幅した音響を操って表現の幅を広げた。名だたるスターが挙(こぞ)って「革命者」と心酔する。1966年のデビューからわずか4年、27歳で夭逝(ようせい)。2日前が50回目の命日だった▼白人の音楽と称された当時のロック界で、黒人がギターをかき鳴らすことは衝撃だった。「異端児」は既存社会に反発するヒッピー文化も追い風に、圧倒的な技量と音楽性で肌の色を超越したカリスマとなる▼熱狂的な支持を集める一方、その特異性から「名誉白人」と揶揄(やゆ)された。黒人解放運動の指導者・キング牧師が暗殺され、人種間の緊張が高まっていた頃である。政治闘争を嫌忌したが故に逆差別にも直面する▼「ニガー」と蔑(さげす)まれても多くは語らなかった。「俺は自由か? だとすれば走り続けているからだ」。希代のギタリストが駆け抜けた時代の考察は、邦訳『ジミ・ヘンドリックスとアメリカの光と影』に詳しい▼69年のウッドストック・フェスティバルには40万人が押し寄せた。トリを務めた彼のアメリカ国歌は名演として語り継がれる。高らかなのに破壊的。自由と分断。大国が抱え続ける二面性に聞こえる。