天鐘(5月16日)

JRの駅にある「みどりの窓口」が、4年後には今の3割ほどに減るという。先日の本紙に見つけた記事だ。コロナ禍で赤字が続く鉄道事業。効率化の波はこんなところにも及ぶ▼鉄道旅の楽しみは切符を買うところから始まるという人は多い。ネット予約もいいけれ.....
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 JRの駅にある「みどりの窓口」が、4年後には今の3割ほどに減るという。先日の本紙に見つけた記事だ。コロナ禍で赤字が続く鉄道事業。効率化の波はこんなところにも及ぶ▼鉄道旅の楽しみは切符を買うところから始まるという人は多い。ネット予約もいいけれど、出発前の高揚感はまず、あの小さな窓口にある。行き先を告げ、その街の風景を思い描けば、心はもう旅気分だ▼今日16日は「旅の日」である。かの松尾芭蕉が「奥の細道」へと出発した日にちなむ。〈行く春や鳥啼(な)き魚の目は泪(なみだ)〉は、その時に詠んだとされる一句。さわやかな5月の風に吹かれれば、旅情も大いにかき立てられる▼心が浮き立つ記念日も、悲しいかなここ2年は不遇だ。外出の自粛が求められ、帰省すら思うに任せない。都会で出歩けば「人流」などとも呼ばれるご時世だ。旅好きは青空をうらめしく見上げるしかない▼16の時、登山用ザック一つで初めて一人旅に出たのは、旅の作家として知られる沢木耕太郎さん。「行く先々で触れた人情は、その後の生き方まで決定づけた」と著書に記す。若い頃の旅行は、時に人生の種をまく▼記念日を提唱した日本旅のペンクラブが募集する「旅行川柳」がある。〈また今年稲の匂いを嗅ぎに行く〉。秋の晴天が浮かんでくる。〈こんなにも星が有ったか旅の空〉。澄んだ空気を思い切り吸い込める日はいつ来るか。