【バイデン米政権の対北朝鮮政策】立場一転、苦渋の追認 新方針に同調の日韓、行方を注視

 北朝鮮を巡る構図(写真は朝鮮中央通信、ロイター、ゲッティ)
 北朝鮮を巡る構図(写真は朝鮮中央通信、ロイター、ゲッティ)
バイデン米政権がトランプ前大統領と金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記による一連の米朝首脳会談を批判する立場から一転、合意尊重を打ち出した。北朝鮮を対話に引き出すため、宿敵トランプ氏の業績を追認する「苦渋の決断」(外交筋)。新型コロナウ.....
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 バイデン米政権がトランプ前大統領と金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記による一連の米朝首脳会談を批判する立場から一転、合意尊重を打ち出した。北朝鮮を対話に引き出すため、宿敵トランプ氏の業績を追認する「苦渋の決断」(外交筋)。新型コロナウイルス対策で内にこもる北朝鮮は、呼び掛けに応じるのか。日本と韓国も新方針に同調、米朝関係の行方を注視する。[br][br] ▽レガシー[br] 「超大国を相手に戦略的地位を誇示した朝米首脳会談は、世界政治史の特大の出来事となった」。北朝鮮は今年1月の党大会で金氏とトランプ氏の会談をこう総括した。[br][br] 2018年のシンガポール共同声明の合意は4項目で構成され、「朝鮮半島の完全非核化」より前の項で、新たな米朝関係の樹立や平和体制構築をうたった。当時、野党だった米民主党陣営は「中身がない」「だまされている」と批判。バイデン大統領自身も昨年の選挙戦で「トランプ氏は悪党を親友だと話している」と攻撃していた。[br][br] ブリンケン米国務長官は今年3月、韓国と協議後のソウルでの記者会見でシンガポール声明を尊重するかとの記者の質問に答えなかった。トランプ氏のレガシー(遺産)を認めることに抵抗があったのは間違いない。[br][br] ▽米国頼み[br] ためらうバイデン政権に声明尊重を後押ししたのは日韓だ。韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は「非核化と朝鮮半島の平和構築のために極めて重要な声明だ」と強調。声明を土台にすれば「より早く対話が可能になる」と期待していただけに、米国の新方針を歓迎している。[br][br] 日本政府も、声明を尊重すべきだとの立場を伝えていた。日朝対話の見通しは立たず、6カ国協議のような日本を含む多国間協議も現実味がない。米朝交渉の中で米側が日本人拉致問題を提起することを期待しており、米国頼みという点では日韓は共通している。[br][br] ただ、バイデン政権は、直談判で「グランドバーゲン(一括妥結)」を目指したトランプ氏の手法は取らない方針。19年のハノイでの首脳再会談で、トランプ氏が制裁解除の条件として核を含む大量破壊兵器すべての放棄を求め、決裂したことを踏まえたものだ。[br][br] ▽時間稼ぎ[br] バイデン政権の最優先課題は中国であり、対北朝鮮の優先順位は高くはない。北朝鮮の核は米国にとって「深刻な脅威」(バイデン氏)ではあるが、解決策に「良い選択肢がない」(米当局者)のが実情だ。 かといって、北朝鮮が核実験や米本土を射程に入れる大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験に踏み切れば、それを許したバイデン政権への打撃にもなりかねない。シンガポール声明尊重は挑発行動を抑えつつ「時間稼ぎ」(関係国筋)をしたいとの思惑も透ける。[br][br] 北朝鮮はコロナ対策を理由に昨年1月末からの国境封鎖を継続する一方「敵対勢力の妨害に対処して朝中が団結と協力を強化する」(金氏)として、米国と対立を深める中国との共闘を打ち出す。北朝鮮政府関係者は「米国は敵対視政策の撤回を言葉ではなく行動で示すべきだ」と強調する。[br][br] ただ、新政策を説明したいとの米政府の連絡は無視せず受理。米当局者は「北朝鮮が完全に中国に依存するとは思えない。バランスを取ろうとするはずだ」と指摘、接触実現への期待をのぞかせた。(北京、ソウル、ワシントン共同) 北朝鮮を巡る構図(写真は朝鮮中央通信、ロイター、ゲッティ)