天鐘(5月14日)

「始めよければ終わりよし」の諺(ことわざ)がある。最初順調なら最後までうまくいくという意味で、最初が肝心。一方、「終わりよければ全てよし」と、途中経過がどうあれ、結果さえよければ“めでたしめでたし”の見方もある▼菅義偉首相が描く東京五輪成功.....
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 「始めよければ終わりよし」の諺(ことわざ)がある。最初順調なら最後までうまくいくという意味で、最初が肝心。一方、「終わりよければ全てよし」と、途中経過がどうあれ、結果さえよければ“めでたしめでたし”の見方もある▼菅義偉首相が描く東京五輪成功、解散総選挙勝利、総裁選再選の“絵”。出来栄えは最初のデッサン如何(いかん)にかかる。本格化し始めた新型コロナワクチンの接種である▼全体のモチーフは新型コロナの克服。菅氏が打ち出した高齢者接種は「7月中に完了」の気球や「1日100万回」の高い壁を、野党はインフルエンザのワクチン接種を遙(はる)かに超える“至難の業”と確認を求めた▼政府が行った全国自治体への調査で、86%が「7月中に完了」と回答したという。残る自治体も国が支援して計画を前倒し、不可能を可能にする構え。ドラマなら敷かれた伏線と実線が同化する大きな山場だ▼菅氏の思惑が透けて見える。何もワクチンが「始まり」ではなく、「終わり」が総裁選でもない。国民には医療の崩壊で病床に着けないまま自宅で消えゆく命や、その選別を強いられる医療現場の今が問題なのだ▼内閣官房参与はこの惨劇を「さざ波」と呼び“笑笑”と呟(つぶや)いた。そんな助言が渦巻く官邸だから五輪も手段にしか聞こえない。「命と健康を守る」の常套句も空疎に響く。胸に手を当て主語の「国民」に思いを巡らせてほしい。