【デジタル改革法成立】個人情報保護、後退の恐れ 民間出身者受け入れ、司令塔に危うさ

 個人情報保護制度の見直しイメージ
 個人情報保護制度の見直しイメージ
12日に成立したデジタル改革関連6法は、国会審議を経ても生煮えとの印象が拭えないままだった。最大の論点となった個人情報保護制度の大幅見直しを巡っては、保護水準の低下懸念が解消されずじまい。改革の司令塔組織となるデジタル庁は、大量の民間出身者.....
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 12日に成立したデジタル改革関連6法は、国会審議を経ても生煮えとの印象が拭えないままだった。最大の論点となった個人情報保護制度の大幅見直しを巡っては、保護水準の低下懸念が解消されずじまい。改革の司令塔組織となるデジタル庁は、大量の民間出身者の受け入れに伴う危うさが見え隠れする。[br][br] ▽侵 害[br] 「地方自治の侵害だ」。12日の参院本会議で、反対討論を行った共産党の伊藤岳氏が訴えた。関連法に、自治体の個人情報保護条例を統一する規定があるためだ。[br][br] 保護条例は1984年、福岡県春日市が全国に先駆け制定し、各地に広がった。国の法整備より約20年も早く、条例内容や運用は地域ごとに独自性を持つ。全国の自治体数が1788であることから、これを政府は保護ルールの「2千個問題」と呼び、統一しなければデジタル化に欠かせない個人情報の流通が難しくなると主張する。[br][br] 自治体の個人情報保護はどうなるのか。NPO法人「情報公開クリアリングハウス」(東京)の三木由希子理事長は「基本的には規制緩和される」と警鐘を鳴らす。[br][br] 例えば「個人情報は原則、本人から直接収集」「犯罪歴や信教などの情報は原則、収集禁止」などは条例で規定できなくなる可能性があるという。各自治体は今のところ様子見で、国の指針を待って検討を加速する。[br][br] ▽悲 鳴[br] 主に民間事業者による情報利用を監視・監督してきた個人情報保護委員会の役割を拡大し、行政分野も含めて一手に担わせる点も見過ごせない。[br][br] 個人情報漏えいなどは2019年度、民間で約4500件あった。新たに監視対象となる国の行政機関や独立行政法人では約2700件発生しており、これに自治体と都道府県警察も加わる。[br][br] 保護委は東京・虎ノ門に事務所を構え、職員数は約140人。直近ではLINE(ライン)の利用者情報が中国から閲覧できた問題が発覚し、関係者からは「民間の対応だけで手いっぱい」との悲鳴が上がる。[br][br] 「本当に全国を監視できるのか」と追及する野党に対し、平井卓也デジタル改革担当相は「人員や体制を大幅に強化したい」と繰り返し答弁した。しかし具体像は示していない。[br][br] ▽疑 念[br] 9月発足のデジタル庁。内閣官房は4月、民間から先行採用した約30人の辞令交付式を公開する一方、報道陣に「職員の氏名、兼業先などを尋ねることは厳にお控えください」と注文した。「個人情報に該当する」と判断したという。[br][br] 同庁は職員約500人のうち、120人程度を民間から採用予定で、大手IT企業などとの兼業も認める。関係者によると、先行採用の約30人にはフリーマーケットアプリ運営のメルカリ在籍者らが含まれる。[br][br] 国会審議では「自社に有利になるよう政策をねじ曲げないか」との指摘が相次ぎ、平井担当相は「公平性に疑念を抱かれないよう、十分留意する必要がある」と強調。内閣官房は有識者検討会を設け、不正の未然防止策を議論する方針だ。[br][br] デジタル庁は民間出身者のほか、総務省や経済産業省などからの出向者が集う。「寄り合い所帯は、内輪もめが激しくなりがちだ」と省庁幹部。別の幹部は「発足当初は威勢が良くても、首相官邸の興味が薄れた途端に求心力を失い、漂流するだろう」と予言した。 個人情報保護制度の見直しイメージ