時評(5月8日)

集団予防接種が原因のB型肝炎訴訟で最高裁は、発症時ではなく「再発」から20年以内なら国に損害賠償を請求できるとする判決を示した。発症時から20年以内としている国の方針を覆して被害救済を広く認める判断であり、患者100人以上が各地の裁判所で係.....
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 集団予防接種が原因のB型肝炎訴訟で最高裁は、発症時ではなく「再発」から20年以内なら国に損害賠償を請求できるとする判決を示した。発症時から20年以内としている国の方針を覆して被害救済を広く認める判断であり、患者100人以上が各地の裁判所で係争中の同種訴訟をリードする判例となる。[br][br] 62歳の原告の1人は29歳の時、B型肝炎を発症した。子供の時受けた集団予防接種が原因だった。当時、接種に使う注射器が使い回しされ、感染したとみられる。約2年で症状は治まって職場復帰、結婚もして落ち着いた生活を取り戻した。だが、49歳になって再発、早期退職を余儀なくされた。再発翌年の2008年に提訴した。[br][br] 民法では「不法行為の時を起算点として20年で賠償請求権が消滅する」と規定、請求権が消滅する20年を「除斥期間」としている。[br][br] 集団予防接種によるB型肝炎のように、原因となった行為から何年もたって症状が出るケースがある。04年、筑豊じん肺訴訟で最高裁が「加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合、損害の全部または一部が発生した時」を除斥期間の起算点とする判断を示した。これを受けて06年、B型肝炎訴訟の最高裁判決も予防接種時でなく発症時から起算することを認めている。[br][br] 今回の判決はさらに一歩前に進めているのが特徴だ。原告は29歳で発症、20年後に再発した。判決は「最初の発症時に、後に再発することによる損害賠償を求めるのも不可能だ」「最初の発症と再発とは質的に異なる」としている。20年後の再発を予測なんかできないし、被害救済の観点から見れば、起算点を「再発時」としたのはごく常識的でまっとうな判断である。[br][br] B型肝炎をめぐっては06年の最高裁判決で国の責任が確定し、被害救済の特別措置法が施行された。患者が裁判を起こして国と和解すれば1250万円の給付金を受け取れることになった。[br][br] だが、発症から20年経過後に提訴した場合、給付額が最高300万円にとどまる。国が除斥期間によって線引きをしたためだ。今回の判決が確定すれば、最初の発症でも再発であっても20年以内であれば当然、同じ扱いにしなければならない。[br][br] 集団予防接種によるB型肝炎ウイルス感染者は45万人に上るとみられ、潜在的な患者はかなり存在するといわれている。迅速な解決を図るために国に課せられた責任は重大である。