【緊急事態宣言延長】「短期集中」不発否めず 効果は限定的、医療深刻

 緊急事態宣言などの経過と首相らの主な発言(似顔 本間康司)
 緊急事態宣言などの経過と首相らの主な発言(似顔 本間康司)
菅義偉首相は6日、4都府県への新型コロナウイルス緊急事態宣言の延長を決断した。専門家らの疑問を押し切り、17日間の「短期集中」(首相)の対策に懸けたが、不発に終わった面は否めない。昨年4月からの宣言時並みの抑制を狙った人出は減り切らず、思惑.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 菅義偉首相は6日、4都府県への新型コロナウイルス緊急事態宣言の延長を決断した。専門家らの疑問を押し切り、17日間の「短期集中」(首相)の対策に懸けたが、不発に終わった面は否めない。昨年4月からの宣言時並みの抑制を狙った人出は減り切らず、思惑が外れた格好。大阪府で入院調整中に死亡する人が出るなど医療逼迫(ひっぱく)度は深刻さを増すばかりだ。愛知、福岡両県についても対象追加を決めざるを得ない状況に追い込まれた。[br][br] ▽期待外れ[br] 「効果は出始めているのではないか」。首相は5日夕、宣言発令の意義を巡り、こう自賛してみせた。ただ人出の減少は感染者数の大幅抑制を見込める規模には達していないのが実情だ。[br][br] 首相は今回の宣言の発令を決めた4月23日の記者会見で「人の流れを止める」と表明。周辺は「昨年4月のように社会機能を一定程度停止する。経済に相当な打撃を与えるので、延長は基本的にない」と強調していた。[br][br] だがNTTドコモが算出した4都府県の人出のデータによると、官邸側が期待した1年前の宣言時のような効果は表れていない。今月5日の主要駅や繁華街の人出を昨年5月の休日平均と比べると、20地点中19地点で増加。東京駅南で約2・5倍、大阪・伊丹空港で87・7%増、京都駅では63・9%増となった。[br][br] 病床使用率などを含む他の指標も「期待外れ。思ったほど改善していない」(政府筋)のは明らかだ。官邸幹部は「宣言を解除できると国民に説明できる根拠がない」と首相の苦衷を代弁した。[br][br] ▽危機的状況[br] 大阪と兵庫、京都の関西3府県では医療の危機的状況が続き、改善の兆しは見えない。政権幹部は「ここまでの悪化は想定外だった」と語る。[br][br] 大阪府は入院中の重症者が病床確保数を上回っており、5日には新型コロナ用ではない病床で重症者の治療に当たる事態に陥った。[br][br] 大阪の自宅療養者は5日時点で1万3千人を超える。兵庫でも6日に入院調整中の感染者、自宅療養者がいずれも過去最多になった。自宅で容体が急変し、入院できずに亡くなる感染者も相次いでおり、神戸市幹部は「これから何人亡くなってもおかしくない」と危惧する。[br][br] 大阪府の吉村洋文知事が宣言要請の際に「3週間から1カ月」と想定していた期間は17日間に短縮された。吉村氏はそれでは短く、医療体制の改善も見込めないとして、政府判断に疑問を呈していた。隣接する京都府の担当者は「人の流れを一定程度抑制したかもしれないが、感染者数に表れていない」と指摘した。[br][br] ▽予断許さず[br] 東京都も例外ではない。大型連休中は都の発熱相談センターに年末年始の第3波当時と同水準の2500件前後の相談が寄せられる日が目立った。都幹部は「変異株の感染力の強さを考えると宣言延長はやむを得ない」と漏らした。[br][br] 宣言対象外の神奈川県では、東京からの感染拡大への警戒感が広がる。黒岩祐治知事は「(観光地の)江の島で昨年の大型連休に比べ、人出が5倍近くになった」と県庁で記者団に説明。県内の感染状況に関し「予断を許さない」と述べた。[br][br] 東京医大の浜田篤郎特任教授(渡航医学)は「少なくとも関西圏では感染状況が厳しかったため、約2週間という設定に無理があった」と分析。今後、より強い対策が必要だと警告した。 緊急事態宣言などの経過と首相らの主な発言(似顔 本間康司)