インドの1日当たりの新型コロナウイルス感染確認が連日30万人を超えている。死者も初めて3千人を超え、累計20万超に。世界最悪の拡大ペースで病床や医療用酸素不足は深刻だ。ピークはまだ先で感染確認は100万人に達するとの試算も。「効果的な封じ込めで人類を救った」。昨年の第1波を抑え込んだとしてモディ首相が誇った「成功」はもろくも崩れ去った。[br][br] ▽「終局」[br] 3月7日、首都ニューデリーの高級ホテル。デリー医師会はバルダン保健・家族福祉相のコロナ禍での貢献をたたえた。満面の笑みを浮かべた大臣の顔写真の付いた表彰状。バルダン氏は「インドでのコロナ流行は終局にある」と演説した。[br][br] 昨年3~5月の全土封鎖で人の移動を止め、脆弱(ぜいじゃく)だった医療体制を改善したと政府は強調してきた。昨年9月に1日当たり感染確認者が10万人弱で第1波のピークを迎え、今年2月に1万人を切った。[br][br] モディ氏も1月、スイスのシンクタンク「世界経済フォーラム」主催のオンライン会合で「インドは最大限の市民の命を救った。世界人口の18%が暮らすインドの成功は、地球規模で影響をもたらす」と誇っていた。[br][br] ▽未整備[br] 今や急激な感染拡大で医療体制は崩壊状態。病床不足で多くの人が入院できずにいる。医療用酸素の製造も追いつかず、呼吸器系に症状が出る新型コロナ感染症を患いながら、酸素ボンベがないまま自宅で亡くなった人も多数いるもようだ。[br][br] 地元メディアによると、インド政府は新型コロナ流行を受けて昨年10月以降、全土の病院など162カ所に酸素製造装置の設置を計画。約20億ルピー(約29億円)の予算を付けたが、今年4月中旬までに設置されたのは33カ所にすぎない。第1波の後に残された課題が未整備のまま、第2波に見舞われた実態が浮かぶ。[br][br] 今回の急拡大は二つの変異が一つのウイルスで起こる「二重変異株」や、感染力が強いとされる英国型が原因と指摘されている。実態は不明だが「三重変異株」(地元メディア)も新たに登場し、衝撃が広がった。[br][br] 政府系シンクタンクはピークが5月中旬ごろとなり1日当たりの感染確認は50万人になる試算を示した、と報じられている。別の疫学者は地元紙に、5月中旬のピークには80万~100万人に達するとの推定を示した。(ニューデリー共同=和田真人)