菅義偉首相は謝罪を何度繰り返すのか。感染力の強い変異株拡大で新型コロナウイルス流行の第4波は全国で重大局面を迎えている。まん延防止等重点措置は効果が十分でなく、東京、京都、大阪、兵庫の4都府県を対象に3度目の緊急事態宣言に至った。[br][br] 昨年4月と今年1月の宣言より強い要請で、今年も大型連休は人出が抑制される。人間本来の社会機能を排して接触を減らせば感染症は減少に転じる。この古い原則に返らなければならないのは厳しい選択だ。流行が始まって1年余、政府は何をしてきたのか、疑問が残る。[br][br] 大阪府や兵庫県では感染が分かっても入院できずに自宅療養が増え続け、適切な治療を受けられないまま症状が急変して亡くなるケースが相次いでいる。重症者の受け入れ病床が既に逼迫(ひっぱく)して医療崩壊は始まっている。この崩壊からの回復が最も急を要する。[br][br] 今は大災害が長期化する状況に近い。かつてない深刻な危機だ。自粛への疲れや慣れはあるが、人出を抑えて新規感染者を減らすとともに、病床確保などで患者を治療する態勢を強めるしかない。医療連携を進め、民間病院もコロナ医療の一翼を担うよう求めたい。[br][br] 人々の自制で感染は減らせても、重症者や死者減少まで2週間以上かかる。関西の医療崩壊はまだ続く見込みで、宣言の期限の5月11日で解除するのは難しい。しかし、感染を予防できる施設にまで休業要請を長引かせるのは無理がある。状況を見て段階的に緩和した方がよい。[br][br] 感染力の強い変異株に苦しんだ英国は1月をピークに流行が収まった。ロックダウンに加え、迅速なワクチン接種が功を奏した。日本もワクチン接種を加速する必要がある。「6月末までに高齢者全員約3600万人分のワクチンを配布する」という政府の方針は重い公約で、その通り着実に実施してほしい。[br][br] 緊急事態宣言は私権を制限し、暮らしへの打撃も大きい。人の命を守るためやむを得ないが、短期にとどめる努力は要る。一方、変異株が次々に現れる脅威を抑え切れずに対策強化を繰り返す愚は避けるべきだ。 個人の自由を制限せずに感染症を抑えるにはワクチンや治療の改善が鍵を握る。政策が一部の感染症専門家と政治力学で決まるのは好ましくない。有効性が確かでない策に頼るのでなく、変異し続けるウイルスへの対策も進化させるべきだ。協力しつつ、緊急事態は今度で最後にとの願いを共有したい。