サッカーJ3のヴァンラーレ八戸が次のステージへ本格的に動き出す。6月にも「J2」への昇格に必要なライセンスをJリーグに申請する。昇格が実現すれば、より質の高いプレーを八戸でも楽しめるようになる。「上のレベルを目指すことで地域に明るい話題を提供したい」とするチーム側の意欲に敬意を表したい。[br][br] Jリーグは競技水準や施設水準の持続的向上、クラブの経営安定化、財務能力・信頼性の向上などを目的に、クラブライセンス制度を導入。制度ではJ1、J2、J3のカテゴリー別に、スタジアムに必要な施設、設備などの要件を設定している。昇格可能な成績を残しても、上のカテゴリーのライセンスを取得していない限り、昇格できないシステムになっている。[br][br] J2ライセンスの取得に当たって、ホームスタジアムとしているプライフーズスタジアム(八戸市)は満たしていない要件が多い。例えば、入場可能数は現状で芝生席も含めて約5千人だが、J2ライセンス取得に当たっては観客席だけで「1万人以上」が求められる。観客席を覆う屋根や室内のウオームアップエリアなども必要とされる。[br][br] ただ、懸案だった夜間照明設備が3月に完成したことで、J2ライセンス申請に向けた環境が一応整った。「例外適用規定」を利用した申請が可能になったためだ。例外適用規定は、要件を満たすスタジアムの新設、改修のめどを立てられていれば、上位ライセンスを付与し、昇格も認めた上で最長8年まで要件達成を猶予するという内容。ヴァンラーレはこの規定を利用して申請する方針で、それ自体は受理される見通しという。[br][br] チームがJ2昇格を目指す姿勢を示すことで、スポンサーやより力のある選手の確保につなげたい思惑もあろう。しかし、現スタジアムを改修するにしろ、別に新スタジアムを整備するにしろ、市や関係者との金銭面を含めた調整が必要で、新型コロナウイルス禍の現状での実現は容易でない。[br][br] 仮に猶予期間内にスタジアムの新設、改修を終えられなかった場合は、昇格していた場合でも強制的にJ3に降格となる。その後、上位ライセンスを再び申請しようとしても、例外規定を二度と利用できなくなるリスクもある。状況を見極め、慎重な判断が求められる。[br][br] 昇格には成績要件(2位以内)の達成も不可欠。今季も5試合を終えて11位(24日現在)と昇格圏には程遠いだけに、チーム一丸での奮起が望まれよう。