【キューバで世代交代】カストロ兄弟統治に幕 「伝説」なき後継者に課題

 食料品店の前で行列をつくる人々=2月9日、キューバ・ハバナ(ゲッティ=共同)
 食料品店の前で行列をつくる人々=2月9日、キューバ・ハバナ(ゲッティ=共同)
カリブ海の社会主義国キューバを長年統治してきたカストロ兄弟の時代が終わった。1959年のキューバ革命を兄の故フィデル・カストロ氏と実現したラウル・カストロ氏(89)が全ての要職から退いた。ディアスカネル大統領(61)が最高権力である共産党第.....
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 カリブ海の社会主義国キューバを長年統治してきたカストロ兄弟の時代が終わった。1959年のキューバ革命を兄の故フィデル・カストロ氏と実現したラウル・カストロ氏(89)が全ての要職から退いた。ディアスカネル大統領(61)が最高権力である共産党第1書記の座も手に入れたが、革命を闘った「伝説」を持たず、経済や対米関係などの諸課題で難しいかじ取りが待ち受ける。[br][br] ▽正統性[br] 「選び抜かれた人物」。党トップからの退任を表明した16日、ラウル氏は後継に育て上げたディアスカネル氏を激賞し、指導者としての正統性を強調した。ラウル氏はかねて退任の時期を公言していたため、国内に動揺は広がっていない。[br][br] 国民の関心は日々の生活だ。キューバでは近年、食料を求めて市民が店に何時間も長い列をつくる光景が日常となっている。ハバナの50代女性は「朝早く並んでも欲しいものが手に入らない」と、こぼす。[br][br] トランプ前米政権が4年間で強化し続けた経済制裁に新型コロナウイルス流行が追い打ちを掛け、2020年の国内総生産(GDP)成長率は推定マイナス11%。主要産業の観光が大打撃を受け、輸入頼みの食料供給が滞っている。[br][br] 最大の支援国だったソ連の崩壊後に襲われた、1990年代の深刻な経済危機以来の厳しい状況とされる。ことし1月、長年の懸案だった二重通貨制の廃止を断行したことも物価高騰を招き、国民生活を直撃している。[br][br] ブラジル・リオデジャネイロ州立大のラファエル・アラウジョ准教授(米州史)は「ディアスカネル氏にはカストロ兄弟が体現した、武器を持って革命を闘った伝説性、英雄性がない。国民がどの程度ついて行くかは分からない」と指摘する。[br][br] ▽継続性[br] ディアスカネル氏は昨年11月、米大統領選で勝利を確実にしたバイデン氏に期待感を示し「お互いの違いを尊重しながら建設的な2国間関係を維持する可能性を信じている」とツイッターに投稿した。だがホワイトハウスのサキ報道官は今月16日の記者会見で「対キューバ政策の変更は、バイデン大統領の現在の優先事項ではない」と発言。両国関係が急激に改善する兆しはない。[br][br] トップ交代で変化が起きるとの意識は国民の間に薄い。ディアスカネル氏自身が「継続性」を強調、戦略的な判断はカストロ氏に意見を聞くとしているからだ。ある外交筋はディアスカネル氏が「カストロ氏が亡くなった後に抜本的な改革を行う可能性はある」とするが、それまでは大きな変化はないとみる。(サンパウロ共同) 食料品店の前で行列をつくる人々=2月9日、キューバ・ハバナ(ゲッティ=共同)