天鐘(4月19日)

一向に衰えないコロナウイルス。テレビをつければ連日、感染者のニュースである。全国の状況は、あの列島をかたどった地図で知る。毎晩気になり、目にしない日がなくなった▼今日は「地図の日」だそうだ。1800年、国土測量のため、伊能忠敬が北海道へ出発.....
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 一向に衰えないコロナウイルス。テレビをつければ連日、感染者のニュースである。全国の状況は、あの列島をかたどった地図で知る。毎晩気になり、目にしない日がなくなった▼今日は「地図の日」だそうだ。1800年、国土測量のため、伊能忠敬が北海道へ出発した日にちなむ。社会科で習った、あの「大日本沿海輿地(よち)全図」。伊能が17年もかけて、海岸を歩いた成果である▼当時、国防上、正確な日本地図の作成が不可欠だった。けれども前例がなく、身の回りの装備も不十分。極めて困難な旅だったことは想像に難くない。総延長約4万キロ。地球1周分の距離を、ただひたすらに彼は歩いた▼驚くのは、それだけではない。測量の開始は55歳のときだというから恐れ入る。成功していた商売からすっぱりと手を引き、自らの研究に没頭した。その決断力と行動力、バイタリティーに頭が下がる▼昔取材した成人式の記念品が地図だったことがある。初めは意味が分からなかったが、後に思った。若者たちの門出である。あれは「己の道を迷わず進め」とのメッセージではなかったか、と。心に残る、粋な贈り物だ▼新入学に就職、そして第二の人生。春は新しい生活のスタートでもある。コロナ禍の世は窮屈だが、胸にまっさらな地図を広げて、夢や希望を描きながら歩いていきたい。「さあ、元気に出発」と、偉大な先人も応援している。