時評(4月19日)

青森県は3月、東北から北海道の太平洋沖にある日本海溝・千島海溝沿いを震源とする地震などをシミュレーションに加えた、新たな津波想定を公表した。各地で最大津波高の上昇や浸水域の拡大が見られており、県や市町村には、現行の津波対策の見直しを迅速に進.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 青森県は3月、東北から北海道の太平洋沖にある日本海溝・千島海溝沿いを震源とする地震などをシミュレーションに加えた、新たな津波想定を公表した。各地で最大津波高の上昇や浸水域の拡大が見られており、県や市町村には、現行の津波対策の見直しを迅速に進めてほしい。[br][br] 県の従来の想定は、2012年から15年にかけてまとめられた。東北を中心に大きな被害をもたらした東日本大震災を受け、国が新たな津波対策の考え方を示したのがきっかけで、県独自に三陸沖北部の地震などをシミュレーションした。最大津波高は、おいらせ町23・5メートル、八戸市23・1メートル、階上町20・0メートル、三沢市16・7メートルなどとした。[br][br] さらに国は20年4月に日本海溝・千島海溝沿いを震源とする地震の想定を公表。宮城県沖を震源とした東日本大震災よりも北部の地震をシミュレーションしており、青森県や岩手県北では、震災を上回る規模の津波を予想。最大津波高は八戸市26・1メートル、階上町21・5メートル、おいらせ町17・6メートル、三沢市15・9メートルなどとした。[br][br] こうした新たな知見を踏まえたのが今回まとめた青森県の想定だ。八戸市26・1メートル、階上町21・5メートルと国の予測と変わらない市町村があった一方、県独自のシミュレーションも加え、おいらせ町24・0メートル、三沢市17・1メートルなど一部ではさらに大きな津波が押し寄せると予想した。[br][br] 浸水域の拡大も見られた。八戸市では、馬淵川を津波がさかのぼり、海から離れていて津波とは無縁と思われていた、八戸駅がある内陸部の尻内町地区にも浸水範囲が及んだ。風間浦村や六ケ所村では、役場新庁舎の整備候補地が浸水域に含まれ、見直しを迫られている。[br][br] 県内では、震災を契機に津波への備えが進んでいた。防潮堤や避難所の整備などハード事業はこの10年で完了したが、今後は防災施設の機能の再点検が必要だろう。住民の命を守るためには、迅速な避難行動も不可欠で、ソフト事業にもさらに力を入れなければならない。自治体と住民が一体となって取り組みを進めるべきだ。[br][br] 津波対策を議論する上では、短期的な視点と中長期的な視点に立って課題を整理することが大事だ。避難計画やハザードマップなど防災分野だけでなく、まちづくりの在り方などについても影響がないか、見直す契機にしてほしい。津波の脅威に不安を抱く住民もいる。自治体には、住民に対し、今回の想定を丁寧に説明してもらいたい。