時評(4月17日)

来年春から高校で使われる教科書が公表された。新設の「公共」では安楽死やワクチン接種の優先順位、同性婚などを取り上げ、生徒が議論し考える力を養う工夫が盛り込まれている。先行きの見通せない今の世の中では自ら考える能力が最も必要であり、問題解決の.....
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 来年春から高校で使われる教科書が公表された。新設の「公共」では安楽死やワクチン接種の優先順位、同性婚などを取り上げ、生徒が議論し考える力を養う工夫が盛り込まれている。先行きの見通せない今の世の中では自ら考える能力が最も必要であり、問題解決の力を付けた高校生が次世代を担うことを期待したい。[br][br] 検定し公表された教科書は、2018年に告示された新しい学習指導要領に対応。「公共」は18歳選挙権が実施され、高校生も「社会の課題を多角的に考察、議論し解決につなげる力を養う」ために新設され、全高校生が必修する科目となった。[br][br] ある「公共」の教科書は、18年に発覚した医学部の不正入試問題を取り上げている。女性の受験生を不利に得点操作していた重大なジェンダー問題であり、高校生がどう問題を把握し、議論するか、大変興味深い。[br][br] ワクチン接種の優先順位は新型コロナウイルス感染で実際に議論になっているテーマである。政府や自治体、専門家が検討していることがリアルに学べ、現実に採用された優先順位が妥当だったか、批判の対象として学習されることも起こり得る。[br][br] 同じく新設、必修となった「地理総合」は、世界各地の生活や文化、人口問題といった一般的な地理のほかに自然災害、防災に重点を置いている。[br][br] 東日本大震災で改めて認識させられたことは、日本列島が地震、火山、台風など深刻な被害をもたらす自然現象にさらされている現実である。小中学校でも防災教育が重視されているが、高校でもより体系的に学び、防災意識を高める必要がある。全高校生の必修としたことは評価できる。[br][br] 新学習指導要領の理念は「主体的・対話的で深い学び」だ。問題は「公共」にしても「地理総合」にしても高校教育の現場で目指す授業が実現できるか、である。[br][br] ジェンダー問題で教員は「日本では1945年、女性の参政権が認められた」と知識を教えるだけでは不十分で、不正入試問題がテーマであれば、資料を読み、生徒に議論、考えさせなければならない。防災ではハザードマップを見て避難方法の検討を指導し、実際に現場を歩き検証することになるかもしれない。手間がかかる授業だ。[br][br] それでなくても教員は多忙だといわれている。従来の細かい知識を問う大学入試に備える授業もまだ必要だろう。高校の現場が疲弊しないか、慎重な目配りが必要だ。