【柏崎刈羽運転禁止】原発復権議論に影 変わらぬ東電、強まる逆風

 原発の再稼働を巡る状況
 原発の再稼働を巡る状況
原子力規制委員会が東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)に対する事実上の運転禁止命令を出した。核物質防護を巡る一連のずさんな対応は、福島第1原発事故から10年を経ても変わらない東電の安全軽視の体質を浮き彫りにした。信頼回復の進まない原子力への風当た.....
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 原子力規制委員会が東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)に対する事実上の運転禁止命令を出した。核物質防護を巡る一連のずさんな対応は、福島第1原発事故から10年を経ても変わらない東電の安全軽視の体質を浮き彫りにした。信頼回復の進まない原子力への風当たりがさらに強まるのは必至で、原発復権を狙った政府のエネルギー政策見直し議論にも影を落とす。[br][br] ▽最大の判断[br] 「事故を経てなお『なんで東電で』ということが起きる。なんとも言えない思いがある」。14日の命令後の記者会見で、規制委の更田豊志委員長は落胆を隠さなかった。[br][br] 更田氏は2013年に東電が審査を申請して以降、17年12月に合格するまでの大半の期間、柏崎刈羽6、7号機の審査を担当。福島第1原発と同じ沸騰水型の中で他原発に優先して審査を進めてきた。[br][br] 審査中も東電に原発の運転資格を認めるかが焦点となったが、更田氏は17年9月に「技術力で東電が劣るということはない。柏崎刈羽をきちんと運転することで(事故の)責任を取るという考えに一定の理解を持っている」と発言。20年10月には7号機で一連の手続きが終了し、再稼働のハードルは地元の同意のみとなっていた中で不祥事が発覚した。[br][br] 命令は、同原発での燃料装塡(そうてん)や新燃料搬入など核燃料の移動を禁じる。「規制委発足後の命令としては最も大きい判断」(更田氏)で、禁止期間は「自律的な改善が見込める状態」になるまで。今後1年以上かけて規制委が行う検査の結果次第では、原子炉設置許可の取り消しという「伝家の宝刀」(規制委幹部)が抜かれる可能性も残る。[br][br] ▽痛手[br] 「事業者の中で最も襟を正さなければいけない彼らがまた足を引っ張る。一体どうなっているんだ」。ある経済産業省幹部は東電へのいら立ちをぶちまける。[br][br] 国は昨年から、将来の電源構成を示す「エネルギー基本計画」の見直しに向けた議論を本格化させた。菅義偉首相が就任直後に打ち出した、温室効果ガス排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を旗印に、原発の必要性に関する議論も進めたい考えだ。[br][br] 「発電コストや経済波及効果からも原子力の有用性を説明したい」(経産省幹部)との狙いから、今年3月には、15年に行って以降、封印していた電源別の発電コストの再検証にも着手したが、それ以前の安全や信頼に疑問符が付いた。「あれだけ不信感を招いているのは痛手だ」。同省内には議論の行く末や、命令前日に方針が決まったばかりの第1原発処理水の海洋放出に対する悪影響を懸念する声も上がる。[br][br] ▽積み木[br] 福島の事故後、新規制基準を満たして再稼働した5原発9基はいずれも西日本にある加圧水型。原発比率の向上には東日本に多い沸騰水型の再稼働が欠かせないが、1番手と目された柏崎刈羽は絶望的に。他に審査合格済みの日本原子力発電東海第2(茨城県)は地元同意が進まず、東北電力女川2号機(宮城県)は安全対策工事が22年度まで続く見通しだ。[br][br] 東海第2を巡っては、水戸地裁が今年3月18日、避難計画の不備を理由に運転差し止めを命じた。避難計画の実効性確保は各地の原発に共通の課題で、原発活用の前提は揺らぎ続けている。[br][br] 「原子力はまるで積み木。積んでは崩すの繰り返しだ」。ある原発立地地域選出の自民党国会議員は嘆いた。 原発の再稼働を巡る状況