新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすい高齢者へのワクチン接種が始まった。感染力が強いとされる変異株も広がり、感染拡大の第4波に入りつつあるだけに一般国民への初の接種開始に期待は高まる。[br][br] だが、ワクチン供給の見通しは不透明で普及まで時間がかかるのは確実だ。何としても感染の爆発的拡大を阻止しなければならない。拡大が収まらなければ遅れながらも進むワクチン効果を帳消しにする恐れがある。[br][br] 一向に進まない検査拡充、医療体制の充実はもちろん、新たな対策を含めた徹底した感染防止策も同時に求められる。[br][br] 政府は6月末までに高齢者約3600万人を上回る量のワクチンを供給できるとしている。しかし、こま切れで量も限られる。市町村への分配は都道府県任せだ。実務を担う多くの自治体は当惑している。既に疲弊している自治体や保健、医療関係者の負担を軽減しなければならない。政府には供給量や時期をきめ細かく示す責任がある。[br][br] 菅義偉首相はワクチン接種をコロナ対策の「切り札」と期待してきた。率先してワクチン供給量確保を主導してほしい。[br][br] 高齢者には副反応や手続きなどの情報を分かりやすく提供する必要がある。情報を入手しにくい高齢者もいる。細かい配慮が必要だろう。接種が進めばトラブルも起きる。新たな課題を教訓として広く共有することも大切だ。[br][br] 政府は高齢者接種を開始した同じ12日、「まん延防止等重点措置」の対象を6都府県に拡大した。3月の緊急事態宣言解除時に政府は5本柱の施策を打ち出していた。このうち検査拡充、医療体制の充実など四つは昨年から目指したはずだ。新たな変異株の対策強化もまだ結果が出ていない。[br][br] 「まん延防止措置と聞いても宣言との違いが分かりにくい」と感じる人は多い。政府判断はよもや3度目の宣言を避けたいためではあるまい。各地で変異株が広がり、飲食店への時短要請を柱とする対策では限界も見えてきた。日本の対策は最大のヤマ場を迎えたとも言える。菅首相や感染拡大地域の知事は新たな対策を主導すべきだ。[br][br] 感染爆発が起きれば地域の医療体制は最悪、崩壊する。接種担当の医療スタッフ確保に影響し、ワクチン普及をさらに遅らせる可能性が高い。[br][br] 適切なワクチン政策と徹底した感染防止対策は一体のはずだ。政府は強い危機感で臨んでほしい。その覚悟がなければ、国民に行動抑制を求めても伝わらない。