経済産業省は来年度から、原発の使用済み核燃料をプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料としてプルサーマル発電で再利用した後の燃料について、2030年代後半の再処理技術確立を目指して研究開発を加速させる。電力業界がプルサーマルの新たな計画を打ち出す中、棚上げしてきた使用済みMOX燃料の行き先を巡る課題にようやく重い腰を上げた格好だ。一方、肝心の「第2再処理工場」は依然として輪郭をつかめずにいる。[br][br] 「より実用化を意識した研究開発をしていきたい」。22日に開かれた総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の作業部会。資源エネルギー庁幹部が使用済みMOX燃料の再処理方針に言及すると、委員からは「幅広く研究を拾い上げる土壌をつくるための投資をしてほしい」(東京慈恵会医科大の越智小枝講師)など肯定的な意見が相次いだ。[br][br] 関連予算を21年度当初に10億円計上し、通常の使用済み核燃料と使用済みMOX燃料の「混合再処理」といった可能性を探るという。ただ、09年に九州電力玄海原発(佐賀県)でプルサーマルが始まって以来、使用済みMOX燃料に関する議論は一向に進んでこなかった。なぜ経産省はこのタイミングでアクセルを踏み込んだのか。俯瞰(ふかん)すると、大量保有に世界から厳しい目が向けられているプルトニウムの存在が浮かび上がってくる。[br][br] 核燃料サイクルの本命と目された高速炉開発から「増殖」の文言が消え、本格利用が見込まれる時期も21世紀後半に先送りされたことで、サイクルの大義はプルトニウム消費に変容した。非核保有国で最多の45・5トンのプルトニウムを保有する日本にとって、軍事転用の懸念を払拭(ふっしょく)するためにも保有量削減は至上命令。「需給バランスを確保し、プルトニウム保有量を必要最小限とする」。18年夏、原子力委員会が15年ぶりに改定したプルトニウム利用指針が重くのし掛かる。[br][br] 消費手段として残されたプルサーマルの推進に向けて昨年末、東京電力福島第1原発事故後に初めて見直した計画で「30年度までに少なくとも12基」との目標を示した電気事業連合会。電力各社が海外に保有するプルトニウム融通策についても検討し始め、今月2日の原子力委定例会合で具体案を表明した清水成信副会長は「稼働する原子炉で一基でも多く導入できるよう最大限の努力を傾注する」と鼻息を荒らげた。[br][br] 一方、使用済みMOX燃料を取り巻く課題は山積している。その一つはかねて搬出先として想定された、日本原燃の再処理工場(六ケ所村)に続く新たな工場建設構想だ。[br][br] かつての原子力政策大綱では「10年ごろから検討を開始する」と位置付けたが、福島第1原発事故を経て頓挫。世論の不信感が根強い中、推進派の有識者は「技術論の前に入り口で迷走するだけ」と本音を打ち明ける。検討に当たって踏まえるべき動向と例示された原燃の工場もいまだ運転の日を見ない。[br][br] 第2再処理工場について、同庁原子力立地・核燃料サイクル産業課担当者は「フェーズ(局面)が違う」と明言を避けるが、サイクル政策に批判的立場の伴英幸原子力資料情報室共同代表は「そもそも(使用済みMOX燃料を再利用した燃料の)需給関係が成立するのか」と疑問を呈した上で「次の工場は立てられないだろう。混合再処理が六ケ所再処理の延命策になるのではないか」と指摘する。