青森県漁連などは3月、県内44漁協の新たな再編方針を説明する組合長会議を県内各地で開催した。目標時期を現行の2020年度末から25年度末までに5年、延期したことなどを報告。漁協側の大半は将来的に合併が必要と認識しているようだが、個々の思惑はさまざまで、なお曲折も懸念される。[br][br] 17年に県漁連などは各漁協を地域別に三八、下北、陸奥湾、西北の4ブロックに集約する計画を策定。ゆくゆくは県内で一つの漁協にまとめる構想だった。しかし、合意形成は進まず、期限は当初の19年度末から20年度末、そして今回の5年後と2度にわたり延期された。会議は3月中に一巡し、21年度は実質的な仕切り直しの年となる。[br][br] これまでの経緯を振り返ると、三八ブロックは、三沢市漁協が早々と不参加を表明し、19年には市川漁協(八戸市)も離脱。八戸みなと、八戸鮫浦、八戸市南浜、階上、百石町の5漁協が「青森県太平洋南部漁業協同組合」の名称で統合する方針を決めていた。また、下北ブロックでは20年に下風呂、易国間、蛇浦の3漁協が合併し「風間浦漁協」が発足。さらに、大間、佐井、風間浦3町村の漁協が「北通」、むつ、東通、六ケ所3市村は「東部」と、2地区に分かれて協議を続けていた。[br][br] 一連の流れを踏まえ、県漁連は新たな方針で、再編の範囲を5ブロックに変更。地域事情に配慮し、合併に対する熱意を重視する意向も示している。 漁業をはじめ1次産業は国や自治体の政策に大きく左右され、設備投資などに補助金なしで取り組むのは難しい。合併によるマンパワーの確保や組織の効率化、経営体力向上といったメリットに異を唱える向きは少ないだろう。[br][br] 一方、各漁協間では取り扱う魚種や操業形態、財務状況の違いなどがネックとなり、議論は深まっていない。新型コロナウイルスの影響で会合を開けず、意見交換の場を持つこと自体が困難だった側面もあった。[br][br] 県内の漁業環境は年々、厳しさを増している。漁師の高齢化と後継者不足に加え、全ての魚種で水揚げの落ち込みが深刻化。20年は八戸みなと漁協が卸売事業から撤退するなど、水産業界全体の先細りを反映するような出来事が相次いだ。[br][br] 漁協合併は危機的状況からの反転につながるのか。漁業者の理解を得るためにも、関係者は積極的な情報開示に取り組み、虚心坦懐に話し合いを重ね、利益の最大化を模索してほしい。5年は決して長くない。