時評(3月25日)

同性婚を認めない民法などの規定が憲法違反かどうかを争った訴訟の判決で、札幌地裁は同性婚の否定は不合理な差別に当たるとして、初の違憲判断を示した。性的少数者に対する偏見と差別の解消が懸案になっている中、画期的な判決だ。 愛する相手が異性か同性.....
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 同性婚を認めない民法などの規定が憲法違反かどうかを争った訴訟の判決で、札幌地裁は同性婚の否定は不合理な差別に当たるとして、初の違憲判断を示した。性的少数者に対する偏見と差別の解消が懸案になっている中、画期的な判決だ。[br] 愛する相手が異性か同性かは個人の自由で、法的にも問題はない。ただ現在の戸籍行政は同性婚を受け付けず、同性カップルが男女の夫婦と同じ市民生活を送るにはハードルが高い。[br] 時代の変遷とともに家族の形は多様化し、同性カップルへの国民の理解も広がっている。しかし同性婚には、子どもが生まれないなどとする反対論も根強く、政府は慎重な姿勢を崩していない。人権を守る上からも政府と国会は課題を整理し、法整備に向けて取り組むべきだ。[br] 訴訟は北海道の同性カップル3組が起こし、婚姻届が受理されなかったのは憲法違反だとして国に損害賠償を求めた。札幌地裁判決は性的指向を性別や人種と同じ個人の性質と認定、同性カップルが婚姻による法的利益を受けられないのは差別であり、憲法14条が定める法の下の平等に反すると結論付けた。[br] 婚姻の自由を保障する憲法24条違反とする原告側主張や損害賠償請求は退けたが、他の全国4地裁で審理中の同性婚を巡る訴訟や国民的な議論にも影響するだろう。[br] 政府の見解は、憲法24条は同性婚を想定せず、民法や戸籍法も同性婚を認めていないとする。このため同性の2人が共同生活を営んでも、税金の配偶者控除や遺族年金を受けられず、法定相続人になれないほか、住宅確保も円滑にできないなど不利益な点が多くある。[br] 東京都渋谷区など自治体には性的少数者のカップルを公認し、行政などのサービスを受けられるパートナーシップ制度を設ける動きが加速している。だが法的拘束力はなく、差別的な扱いの解消には至っていない。[br] 同性愛という個人的な性的指向によって差別される状況は、札幌地裁判決が指摘した通り憲法が規定する平等原則に違反することは間違いない。[br] 札幌の判決と同時期、最高裁決定で同性カップルの関係を異性間の事実婚のように法的保護の対象とする判決が確定した。法律婚とは異なるが、一歩踏み込んだ判断だ。[br] 海外では同性婚の制度化が進み、国内でも肯定的な意見が増えている。政府や国会は、養子縁組など親子関係を形づくる制度の課題も含め、同性婚の法制化への議論を深めてほしい。