【米中外交トップ会談】儀礼無視、ぶつかる本音

 米中の構図
 米中の構図
バイデン米政権発足後初めて会談したブリンケン国務長官と中国の楊潔篪共産党政治局員らは外交儀礼を無視し、報道陣を前に1時間超の非難合戦を続けた。「深刻な懸念がある」「見下すのか」。激しい応酬の背景にあるのは、トランプ前政権が放置した中国の覇権.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 バイデン米政権発足後初めて会談したブリンケン国務長官と中国の楊潔篪共産党政治局員らは外交儀礼を無視し、報道陣を前に1時間超の非難合戦を続けた。「深刻な懸念がある」「見下すのか」。激しい応酬の背景にあるのは、トランプ前政権が放置した中国の覇権拡大。世界の行方を握る二大超大国は“初戦”から本音をぶつけ合った。[br][br] ▽上から目線[br][br] 「見下しながら話したいのか」。退出しかけた報道陣を呼び止め、会談場に戻してまで中国批判を展開したブリンケン氏らに向かい、硬い表情の楊氏は厳しい言葉を重ねた。「米国が上から目線で中国と語る資格は、20年前、30年前からない」[br][br] 苦言は止まらない。「こうした(厳しい)言い方をするのは、米国側の物言いのせいだ。外交儀礼にのっとるべきだ」 最初に仕掛けたように見えたのはホスト役のブリンケン氏だった。「中国の行動は世界の安定を維持する秩序を脅かしている」。ワシントンと北京のほぼ中間点にあるアラスカ州アンカレジ。香港や台湾問題、人権や安全保障、経済を巡る批判が次々と口を突いた。[br][br] 「米国流の民主主義を世界に広げるのはやめるべきだ」。待ち構えていたかのように反論を始めた楊氏。15分以上、通訳を待たず、用意していたかのようなよどみない言葉が続く。[br][br] 新疆ウイグル自治区の人権批判に対し「米国にも根深い人権問題がある」とやり返す。ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大事だ)運動を念頭に「黒人虐殺は最近起きた問題ではない」。[br][br] ▽対中圧力[br][br] さや当ては会談前からあった。「対話継続を約束する意図はない」。懸念を伝える場にすぎないとしてきたブリンケン氏に対し、中国外務省は「ハイレベル戦略対話」と位置付け、対話再開に意欲を示していた。[br][br] 反中感情が高まる中、容易に妥協できないバイデン政権。会談場所も「米国で会うことが非常に重要」(米政権高官)で、日韓歴訪後の経由地アンカレジを選んだ。「タイミングも重要だった」。日本とオーストラリア、インドとの4カ国枠組み「クアッド」の初首脳会談や同盟国日韓との結束確認後、対中圧力をかける戦略を描いていた。[br][br] ▽探り合い[br][br] だが「米国第一主義」で国際協調を怠ったトランプ前政権期に中国は着実に力を付けていた。新型コロナウイルス禍を早々に克服し、ワクチン外交で各国に貸しをつくる習近平指導部。南シナ海の島々を実効支配下に収めても、国際社会は有効策を打ち出せないままだ。[br][br] 「米国重視の表れだ」(中国の米専門家)。外交トップの楊氏と王毅国務委員兼外相がタッグを組み対米協議に赴いたのは極めて異例。崔天凱駐米大使は会談前、中国は「こんな寒空と雪の大地」まで多大な労力を払って来たとアピールした。[br][br] 「米外交戦略の重点がインド太平洋地域に向き、習指導部は安全保障上の強い不安感を抱いている」(中国の政治学者)。主要国の対中感情が悪化する中、米国と意思疎通を続け、緊張緩和につなげたい意図がのぞく。[br][br] ブリンケン氏が報道陣を呼び止めたのは、言われっぱなしでは示しがつかないからだ。「ウェイト(待って)」。反論を受け、楊氏も英語を使って再びカメラを呼び戻している。楊氏の発言を分析した中国の改革派学者も「外交が宣伝化している」と指摘。会談は決裂に向かうのか。こわもてを演じて腹を探り合っただけなのか。激論は2日目に持ち越された。(アンカレジ、北京共同) 米中の構図