天鐘(3月17日)

春荒れも過ぎ去り、日ごと春めいてきている。大雪に寒波、そして新型コロナの第3波に翻弄された多難な冬だったが、今日は彼岸の入り、週末には春分の日だ。〈梅一輪一輪ほどの暖かさ〉を実感するこの頃である▼江戸中期、蕉門(しょうもん)を代表する服部嵐.....
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 春荒れも過ぎ去り、日ごと春めいてきている。大雪に寒波、そして新型コロナの第3波に翻弄された多難な冬だったが、今日は彼岸の入り、週末には春分の日だ。〈梅一輪一輪ほどの暖かさ〉を実感するこの頃である▼江戸中期、蕉門(しょうもん)を代表する服部嵐雪の作で、「寒梅」の前書きがあり季語は晩冬。梅一輪で切れるが、一輪が重なることで暖かさも増し、春の句と勘違いされがちだ▼でも、北国なら春を待ち侘(わ)びるまさに今。ハウス栽培の草花は店頭を飾っているが、春の息吹と共にやって来る梅、桜、桃の開花はこれからだ。コロナで長い巣籠(ご)もりを強いられている今冬はなおさら待ち遠しい▼雨で諦めていたが、八戸公園の梅が綻(ほころ)び始めたという。伺うと日本庭園の日溜(だ)まりで、早咲き紅梅がパラパラと可憐な花を付けていた。見頃は来月上旬とか。梅を追う桜も平年より早めの来月20日頃だという▼昨年の花見はコロナで閉鎖され、見せ場を失った。今年は今のところ予定通りで、約2千本の桜が蕾(つぼみ)を膨らませて満を持している。浮かれ気分をグッと抑え、人と花とのソーシャルディスタンスにも気を配りたい▼「桜は満開だけでは詰まらない」(『徒然草』)と兼好さん。満開より蕾が弾(はじ)ける頃と花弁(はなびら)が散り終わる頃こそ趣深い。人生の盛衰もかくの如し。「桜は離れて静かに眺めるに限る」と述べている。700年前の卓見に教えられる。