新型コロナウイルス感染拡大の影響で、休業させられたりしたのに労働者が給料を補償されない問題で、国が創設した休業支援金・給付金の利用が低迷している。2月から対象が大企業の非正規労働者にも拡大されたが、制度変更が繰り返されたため、対象条件や期間、補償水準が複雑になった。休業だけでなくシフトが減らされたりした非正規も該当する可能性があるのに認知度は低いままだ。どんな人が対象なのか、制度の現状を整理した。[br][br] 【8割分補償】[br][br] この制度は労働者が自ら申請し、原則として賃金の8割が補償される。厚生労働省は企業が支払った休業手当の一部を補塡ほてんする雇用調整助成金の活用を促すが、休業手当が不払いになるケースが多発したため、昨年6月に新設した。国が確保した予算5442億円のうち、支給決定額は4日時点で約800億円と約15%にとどまる。[br][br] 【外国人も対象】[br][br] 国籍を問わず国内で働く労働者が対象。もちろん学生アルバイトや外国人技能実習生らも申請できる。感染拡大防止のため、郵送か厚労省のホームページで申し込める。[br][br] 【シフト制、派遣】[br][br] 企業規模に目を向けると、当初支給されたのは経営基盤が弱い中小の働き手に限られた。ただ新型コロナで経済低迷が長期化し、大企業で働く非正規への不払いが相次いだ。対象拡大を求める世論が高まり、大企業でシフト制や日雇い、登録型派遣として働く非正規が対象に加わった。[br][br] 【大企業】[br][br] 企業規模は資本金や労働者数で分類が決まる。例えばコロナ禍が直撃して休業が相次いだ飲食店の場合、資本金が5千万円、常時雇用する労働者が50人という条件をいずれも超えると大企業に分類される。片方だけでもこの数値以下になれば中小企業として扱われる。[br][br] 【4~6月分は6割】[br][br] 大企業と中小企業で対象となる休業期間が異なるのが複雑さの原因の一つだ。中小企業は昨年4月から対象だが、既に締め切られた4~9月も一定条件を満たせば申請できる。[br][br] 一方で大企業では昨年4~6月と、緊急事態宣言が再発令された1月8日以降だ。さらに昨秋に時短要請をした19都道府県については、発令の始まりの時期からも対象となる。例えば最も早かった北海道では昨年4~6月に加えて、要請を発令した昨年11月7日以降が対象期間となる。[br][br] 原則として賃金8割が補償される仕組みだが、4~6月分は6割にとどまる。厚労省の担当者は「雇用調整助成金とのバランスに配慮したため」と説明する。[br][br] 【認知度16%】[br][br] 利用が低調な背景には周知が進んでいないことがある。野村総合研究所が昨年12月に実施した調査によると、シフトが減ったパートやアルバイトの女性で、休業支援金・給付金を「知っている」と答えたのは16・1%だった。厚労省幹部は「企業が対象の助成金は経済団体に依頼できるが、個人が対象の制度は浸透させる方法がない」と嘆く。[br][br] 休業支援金の問い合わせは専用のコールセンター、フリーダイヤル(0120)221276。