【連載・漂うコメ】(3)生産調整

水稲生産実施計画の受付会場。生産者は米価の動向が見通せず、頭を悩ませている=2月中旬、八戸市豊崎
水稲生産実施計画の受付会場。生産者は米価の動向が見通せず、頭を悩ませている=2月中旬、八戸市豊崎
「作付け転換が実現できなければ需給と価格の安定が崩れ、危機的な状況になりかねない。まさに正念場だ」 2020年12月下旬、野上浩太郎農林水産大臣は、21年産の主食用米に関する談話でこう強調し、全国の生産者に飼料用米や加工用米、大豆などへの転.....
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 「作付け転換が実現できなければ需給と価格の安定が崩れ、危機的な状況になりかねない。まさに正念場だ」[br][br] 2020年12月下旬、野上浩太郎農林水産大臣は、21年産の主食用米に関する談話でこう強調し、全国の生産者に飼料用米や加工用米、大豆などへの転換を呼び掛けた。大臣がコメの需給に関し直接的な談話を公表するのはまれで、需要減少に見合った作付面積の削減が進んでいないことへの焦りが浮き彫りとなった。[br][br] 農水省は21年産米の需要に見合った生産量を、前年より30万トン少ない693万トンとした。青森県の収穫量の1・2倍に相当する量の削減が必要で、国は補正予算を含め約3400億円と、過去最大規模の水田活用直接支払交付金を活用し、主食用米以外の作付けを促している。[br][br] とは言え、切り替えは簡単ではない。生産者が最も重視するのは手取り収入。ここ数年、主食用米が高値だったこともあり、「交付金を考慮しても所得が減るのでは」と、転換に踏み切れない農家は少なくない。[br][br] 2月下旬、水稲生産実施計画の受付会場となった八戸市豊崎の瑞豊館では、生産者から「規模が小さいし、売り先が決まっている」「これまで主食用以外やったことがない」などと、転作に慎重な声が多く聞かれた。[br][br] 国による生産調整(減反)が18年産から廃止となって以降、作付けは基本的に産地や農家の「自主的な経営判断」とされ、調整は難しくなった。県南のある農協関係者は「主食用をもっと減らさなければ、との思いはあるが、あくまで『お願い』しかできない。コロナ禍で集会を開けず、農家と危機感を共有する場もない」と歯がゆさを訴えた。[br][br] 独自の対策でテコ入れを図る産地もある。十和田市地域農業再生協議会は、21年産で新たに転作を進める農家に対し、10アール当たり5千円を交付する。対象は、飼料用米と稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ)で、財源は市協議会の拠出金を活用する。[br][br] 約3ヘクタールで「まっしぐら」を栽培する同市切田の豊川忠男さん(57)は、価格が下落した場合に備え、主食用米の一部を飼料用米へ転換することを考えており、「独自で加算してもらえるのは助かる」と歓迎する。だが、将来のコメ作りについては不安が尽きない。「主食用も飼料用もコロナ後の価格が見通せず、どうしたらいいのか悩ましい」とため息をついた。水稲生産実施計画の受付会場。生産者は米価の動向が見通せず、頭を悩ませている=2月中旬、八戸市豊崎