時評(3月16日)

中国の全国人民代表大会(全人代=国会)は香港の民主派を選挙から締め出すための選挙制度見直しを決定した。「愛国者による香港統治」をうたう決定により、香港基本法(憲法に相当)の付属文書や香港の選挙法が改正される。 中国は2019年に香港で頻発し.....
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 中国の全国人民代表大会(全人代=国会)は香港の民主派を選挙から締め出すための選挙制度見直しを決定した。「愛国者による香港統治」をうたう決定により、香港基本法(憲法に相当)の付属文書や香港の選挙法が改正される。[br] 中国は2019年に香港で頻発した大規模な民主化要求デモを香港の独立や中国の社会主義政権転覆を狙う敵対勢力の陰謀とみて民主派弾圧を始めた。選挙制度見直しは昨年の香港国家安全維持法(国安法)制定に続く弾圧の具体策だ。[br] これで香港の「一国二制度」「高度の自治」が完全に崩壊するのは確実だ。日米欧など自由主義陣営は連携して、中国に対し、民主派弾圧をやめ、多数の香港住民が望む民主化に道を開くよう要求していくべきだ。[br] 決定によると、香港政府トップの行政長官を選ぶ選挙委員会の定員1200人を1500人、立法会(議会)の定数を70から90に増やす。中国の統制強化のため親中派を増員するもよう。また、選挙委や行政長官、立法会の候補者資格の審査機関を新設し、中国・香港に忠実な「愛国者」だけに立候補を認める。[br] 英植民地、香港は1997年に中国に返還された。84年、中英両国は香港の一国二制度や高度の自治を認める共同声明に合意し、基本法にもその旨が明記された。中国の香港統制は国際公約に背く行為であり、決して容認できない。[br] 香港の民主派は2019年11月の区議会選挙で圧勝、昨年予定されていた立法会選挙で過半数獲得を目指した。危機感を強めた中国・香港政府は国安法違反で民主派の訴追を始め、選挙も延期していた。[br] 全人代幹部は記者会見で「反中勢力が選挙制度の欠陥を利用して国家主権に危害を与えている」と主張した。しかし、基本法にも明記された「自由と民主主義」を求める香港住民の運動は極めて正当なものだ。[br] 先進7カ国(G7)外相は中国の決定について、民主主義を損なうと「重大な懸念」を表明。欧州連合(EU)やオーストラリア、ニュージーランドも次々と非難の声を上げた。[br] 日米、オーストラリア、インド4カ国首脳は「自由で開かれたインド太平洋」構想の推進を確認して中国をけん制。米国は近く行われる米中外交トップ会談で中国に直接懸念を伝える方針だ。自由主義陣営は今後も結束して、香港の民主派を支援し、中国に対して、香港の自由と民主主義を守るよう粘り強く働き掛けていきたい。