【連載・漂うコメ】(1)需要減

慣れた手つきでシャリ玉とネタを握る職人。コロナ禍でコメの消費量は大幅に減った=2月中旬、八戸市の八食市場寿司
慣れた手つきでシャリ玉とネタを握る職人。コロナ禍でコメの消費量は大幅に減った=2月中旬、八戸市の八食市場寿司
新鮮な魚介類を扱う店舗が立ち並び、八戸市随一の観光客数を誇る「八食センター」。2月は例年、中華圏の旧正月「春節」に合わせて日本を訪れる旅行客でにぎわう書き入れ時だ。しかし、今年は新型コロナウイルスの影響で状況が一変し、観光客の姿はまばら。連.....
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 新鮮な魚介類を扱う店舗が立ち並び、八戸市随一の観光客数を誇る「八食センター」。2月は例年、中華圏の旧正月「春節」に合わせて日本を訪れる旅行客でにぎわう書き入れ時だ。しかし、今年は新型コロナウイルスの影響で状況が一変し、観光客の姿はまばら。連日のように行列ができていた「八食市場寿司(ずし)」も空席が目立った。[br][br] 回転寿司ながら、職人の手握りで本格的な味が楽しめるのが同店の売り。シャリはコシヒカリとつがるロマンのブレンド米を使用しているが、来店客数の減少に伴い消費量も激減している。2020年の年間仕入れ量は約14トンと、前年より4割減少。久慈剛統括店長は「コメはすし酢とのバランスにこだわって選び抜いた。早く客足が戻り、自慢のすしを味わってほしいが…」とため息をついた。[br][br] 外食産業の冷え込みは、コメの消費動向に大きな影響を与えた。だが、実はコロナ禍以前から確実に消費量は落ち込んでいた。国民1人当たりの年間コメ消費量は、1962年度の118キロをピークに減少の一途をたどり、18年度は54キロと、約50年で半減した。[br][br] 農林水産省によると、1人当たりの消費量と人口から推計する全国の主食用米需要量は、19年7月~20年6月の1年間で714万トンと、前年同期から21万トン減少。近年は毎年10万トンペースで減っており、想定の倍以上の減少幅となっている。[br][br] 要因の一つには、パンや麺類など主食が多様化し、外食が増えるなど、ライフスタイルの変化が挙げられる。三沢市の総合米穀卸業「KAWACHO RICE(カワチョウライス)」の川村靜功社長は「30年ほど前からコメの売れ行きは落ち込んでいた。数字以上にコメ離れを実感しており、コロナが追い打ちを掛けた」と訴える。[br][br] 同社は卸売業に加え、ペットボトル入り無洗米の開発やカフェを併設した専門店の展開など、時代の変化に対応した事業を打ち出してきた。コロナ禍の巣ごもり需要で好調な部門もあるが、業務用米の需要減が大きく、全体の落ち込みを補い切れていないという。[br][br] 川村社長の目下の懸念は、価格の下落による生産力の低下だ。「生産者の暮らしが立ち行かなくなるほど米価が下がれば、担い手がいなくなる。官民が協力し、業界全体で日本の主食を守る手だてを考えなくては」と語気を強める。[br][br]   ■    □[br][br] 新型コロナの影響で日本のコメが窮地に立たされている。北奥羽地方も例外ではない。コロナ禍で浮き彫りとなったコメの生産、流通の課題を追い、打開策を探る。 慣れた手つきでシャリ玉とネタを握る職人。コロナ禍でコメの消費量は大幅に減った=2月中旬、八戸市の八食市場寿司