【ワクチン接種】効果やリスク、どう周知 自治体「準備で余裕ない」

 新型コロナウイルスワクチンの集団接種を想定した予行演習=2月、岡山県総社市
 新型コロナウイルスワクチンの集団接種を想定した予行演習=2月、岡山県総社市
新型コロナウイルスワクチンの大規模な住民接種を控え、効果やリスクをどう伝えるべきか、自治体が模索している。医師による説明会や動画配信を試みる一方「接種の準備で余裕がない」との悲鳴も。専門家は「行政側の取り組み紹介は極力控え、判断材料となる情.....
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 新型コロナウイルスワクチンの大規模な住民接種を控え、効果やリスクをどう伝えるべきか、自治体が模索している。医師による説明会や動画配信を試みる一方「接種の準備で余裕がない」との悲鳴も。専門家は「行政側の取り組み紹介は極力控え、判断材料となる情報を凝縮して伝えることが、住民の納得感につながる」と指摘する。[br][br] ▽迷い[br][br] 岡山県総社市が2月に行ったアンケートでは、接種を「希望する」が60%に上ったが、「検討中」も34%を占めた。迷う理由は7割が副反応への心配で、2割が効果への疑問。片岡聡一市長は「行政の説明不足だ。情報を早く伝えなければ」と焦る。市の専門家会議では「副反応の頻度を他のワクチンと対比して説明してはどうか」など伝え方に関する議論が噴出。意見は住民配布用のリーフレットに反映した。[br][br] 市は「住民に身近な人からの周知が効果的」とみて、地域づくり協議会幹部や民生委員らへの説明会も実施、地元の医師らが解説した。市福祉委員協議会の高階重行副会長(75)は「分かりやすかった。リーフレットも使って地域の理解を高めたい」と話した。市民が接種の予行演習に参加することで、ワクチンの知識を深めた例もあった。[br][br] ▽動画も利用[br][br] ユーチューブなどを活用する動きも。大野元裕埼玉県知事は県の公式チャンネルで副反応などを説明。大阪府豊中市は保健所長の医師が解説する。担当者は「文字より取っつきやすい」と期待する一方、再生回数を増やすのは簡単ではなく「手段の一つ」との認識だ。三重県は接種を受けた医療従事者の副反応データをグラフ化し、ウェブサイトで公開を始めた。[br][br] ただ、マンパワーの悩みを抱える自治体もある。和歌山市のアンケートでは6割が「様子を見て受けたい」と答えたが、担当者は「接種準備に追われ、情報発信に力が割きにくい。国などが効果的な事例を示してくれると助かる」とこぼした。[br][br] ▽住民目線で[br][br] 伝える内容には注意が必要だ。関西大の本西泰三教授(行動公共政策)らが約8千人に行った調査では「あるワクチンを打つと100人中95人の発症が防げる」と伝えた上で意向を聞くと76%が接種を希望。だが副反応の疑い症状が10万人中20人に出るとの情報を足すと58%に落ち、判断材料や表現で意識が大きく変わることが分かった。[br][br] 本西さんは、こうした傾向を接種への誘導に利用すべきでないと警鐘を鳴らす。また「説明は簡潔すぎると逆に不安をあおりかねない。市町村の担当者は幅広い部署や専門家と協議し、住民目線に立った文言や内容にするべきだ」と提言する。[br][br] 帝京大の石川ひろの教授(健康行動科学)は「文を長くし過ぎず、図解を織り交ぜるといった工夫が重要。『高齢者にとってはリスクより利点が大きい』など、伝えたい相手を意識した説明をすべきだ」と強調した。 新型コロナウイルスワクチンの集団接種を想定した予行演習=2月、岡山県総社市