時評(3月4日)

「産業のコメ」と言われる半導体の世界的な不足が、自動車産業などの生産に深刻な影響を与えている。ホンダやSUBARUは2月にかけて国内や米国の工場で減産に追い込まれ、経済活動の安全保障の見地からも確保の重要性が指摘されている。 普及が見込まれ.....
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 「産業のコメ」と言われる半導体の世界的な不足が、自動車産業などの生産に深刻な影響を与えている。ホンダやSUBARUは2月にかけて国内や米国の工場で減産に追い込まれ、経済活動の安全保障の見地からも確保の重要性が指摘されている。[br] 普及が見込まれる電気自動車(EV)はガソリン車と比較して半導体を2~3倍多く使うとみられ、将来的に実用化される自動運転の車はさらに多くの半導体が必要になる。日本の自動車メーカーは、順調な生産のために安定した確保が必須条件になっている。[br] 今回は年明け以降に自動車メーカーの生産が急回復したことと、コロナ禍による巣ごもり需要の拡大によりパソコンやスマートフォン向け半導体が急増したため、自動車に回す量が足りなくなった。[br] 英国の調査会社オムディアによると、1990年には日本の半導体は世界の売上の47・1%を占めて、国別では米国も上回り首位の座にあった。しかし、その後は急速にシェアを落とし、2010年には20%を割り込み、15年以降は9・5%まで減少して韓国にも大きく後れを取っている。[br] 世界半導体市場統計(WSTS)によると、21年の半導体需要は自動車向けに加えて、第5世代(5G)移動通信システムの普及などにより、前年比8・4%増の4694億ドル(約50兆円)と見込んでおり、一部では争奪戦になる可能性もある。[br] 高速通信が主流になると、大量のデータ通信がひんぱんに行われる。これをさばくために、新たにデータセンターがいくつも新設される。データセンターは半導体が大量に使われて多くの電力を消費するため、電力消費の少ないタイプが必要になる。半導体は絶えず技術開発が求められ、生産がジリ貧になると、開発競争に負けてしまう。[br] 半導体の生産はこれまで世界的に水平分業がなされてきた。日本は回路基板など半導体の材料分野が得意で、台湾は組み立てを中心に委託生産を担ってきた。こうした中で、台湾半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)が茨城県つくば市に研究開発拠点の新設を決めたのは、日本にとってもプラスになる。[br] 米国のバイデン政権は、半導体などハイテク製品の中国依存を減らそうと、サプライチェーン(部品の調達・供給網)を再構築しようとしている。日本は経済の国益を守るために、最新鋭の半導体を十分確保できるようサプライチェーンの見直しが求められている。