八戸市中心街で官民による再開発が近年、活発だ。急速な人口減少や少子高齢化など地域経済を取り巻く環境が厳しさを増す中、大型施設整備が相次いでおり、その効果が注目される。[br] 市中心街は、いわゆるバブル経済が崩壊した1990年代以降、大型店の郊外移転や閉店など空洞化に苦しんできた。[br] 起爆剤として持ち上がったのが、市による大型公共施設の整備構想だ。2011年の八戸ポータルミュージアム「はっち」の開館を皮切りに、16年に八戸ブックセンター、18年にマチニワを次々と整備した。21年は一連の集中投資の締めくくりとなる新美術館のオープンを控える。[br] 民間による投資も続いた。大手ホテルチェーンの進出や地元企業による空きビルの建て替えなどが進み、20年には分譲マンションを核とした複合ビル「DEVELD(ディベルド)八日町」が誕生した。[br] この10年で変わったのは街並みだけではない。市はIT系企業などの市中心街への誘致を積極的に行い、働く場をつくるとともにテナントビルの活用も促してきた。[br] こうした取り組みによって市中心街の三日町の基準地価は18、19年と2年連続で上昇。新型コロナウイルスの影響が色濃かった20年は横ばいで踏みとどまった。[br] 一方で、市などが毎年実施する歩行者通行量調査によると、市中心街の休日と平日の2日間を合わせた通行量(三日町や十三日町の主要8地点)は、この10年間で4万~5万人台を行き来する。はっちに年間で約80万人が来館するなど、新たな施設の整備によって訪れる人は確実に増えているはずである。それにもかかわらず、通行量が伸び悩むのは、イベントなど一過性の利用に終わっているからだろう。経済効果を十分に引き出せているとは、まだ言い難い。[br] 今後の課題は市中心街を日常的に訪れる人をいかに増やし、経済活動に結び付けるかだ。そのためには訪れた人たちの回遊性を高めることが不可欠で、個別に魅力を磨くばかりではなく、それぞれの強みを組み合わせ、市中心街全体で魅力の向上に取り組まなければならない。[br] 大型公共施設の整備には市民の厳しい目が向けられることも忘れてはならない。屋内スケート場を含めた、市による一連の事業によって増加した公共施設の維持管理費は19年度で約6億円に上る。市には市民に納得がいくよう、市中心街の将来像を示してほしい。